
フランスの巨額債務に危機感を抱いた一人の市民が、自らの財布から45ユーロ(約7,588円)を政府に寄付していたことが明らかになった。寄付者は「国家債務が心配だ」との理由で小切手を送付しており、その行動が話題を呼んでいる。
仏紙『ル・フィガロ』によると、寄付を行ったのはステファン・シャマイラールという市民で、昨年12月13日に財務経済省に小切手を送付した。この事実は今月19日、政府官報に寄付受領の通知が掲載されたことで明るみに出た。
寄付額は決して大きくはないが、この行動がフランス財政の厳しい現状を浮き彫りにしていると同紙は指摘している。昨年のフランスの財政赤字は1,696億ユーロ(約28兆6,096億円)で、国内総生産(GDP)比5.8%に達した。累積債務は3兆3,053億ユーロ(約557兆5,659億円)に上り、GDPの113.0%に相当する水準だ。
こうした財政悪化の背景には、長短期の国債発行による債務の膨張があるとみられている。国全体の借金が国民一人ひとりにのしかかる状況にあって、シャマイラール氏のように「わずかでも返済に貢献したい」と考える市民も存在する。
実は同様のケースはこれが初めてではない。2021年にも別のフランス人が、「国の借金を返す一助になりたい」として、財務経済省に4万ユーロ(約674万5,994円)相当の小切手を送付していた。これは当時、会計検査院が「フランスの公的債務は国民一人当たり約4万ユーロに相当する」と試算したことに呼応したものとされている。
国家財政という巨像に対し、個人の善意は微力に思えるかもしれないが、シャマイラール氏のような行動が社会に一石を投じることもある。国民の小さな声が、財政健全化への問いを政府に突きつけている。
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