世界最軽量のスポーツカー
同クラスの約半分の重量
その秘密に迫る

英国の新興メーカー、アナログ・オートモーティブ(Analogue Automotive、AA)が発表した超軽量スポーツカー「VHPK」が注目を集めている。車両重量はわずか1,323ポンド(約600kg)で、軽量スポーツカーの代名詞だった初代ロータス・エリーゼ(755kg)より150kg以上軽い。最新のマツダ・ロードスター(1,073kg)やトヨタGR86(1,276kg)と比べると、ほぼ半分の重量となる。SUVの多くが2トンを超える時代に、600kgという数値は「魔法のような数字」と評されている。
カーボン徹底採用で実現した軽量化
劇的な軽量化を可能にしたのは、カーボンファイバーの徹底的な採用だ。車体だけでなく、インテリア、ホイール、ブレーキにまでカーボンを用いることで、従来の金属パーツと比べ大幅な軽量化を実現した。これは1990年代にエリーゼが試みた金属マトリックス複合材料(MMC)ブレーキの挑戦を、現代的に再解釈したものとも言える。コストや耐久性の壁で途絶えた「軽さへの哲学」を、VHPKは受け継ぎながら進化させた。

独創的なデザインと中央1シーター
デザインにも独自性が際立つ。VHPKは中央1座のシートレイアウトを採用し、重量配分とハンドリングバランスを最適化している。初期エリーゼ・レーサーやエクシージを想起させるパッケージングは、レーシングスピリットを色濃く継承したものだ。
パワートレインは、トヨタやホンダのエンジンではなく、あえてローバーKシリーズをベースに採用。標準仕様は1.8Lで118馬力、高性能版のVHPDは187馬力だが、VHPKでは徹底的にチューニングを施した250馬力仕様を搭載する。結果、パワーウェイトレシオは406馬力/トンに到達。これを支えるため特殊鍛造部品や高強度軽量パーツが随所に使われている。

35台のみ生産される限定モデル
生産はわずか35台限定となる。価格は未発表だが、初代エリーゼが「コストパフォーマンスに優れたライトウェイトスポーツ」と呼ばれたのに対し、VHPKはごく限られたスーパーカーオーナー層をターゲットとしたプレミアムモデルになると予想される。
VHPKの登場は、単なる新型スポーツカー発売ではなく、自動車における軽量化と走りの哲学を現代に問い直す宣言とも言える。大量生産と電動化が主流の中で、極限の軽さを追求するこの試みが業界にどんな影響を与えるのか注目される。
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