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「なぜトランプはノーベル平和賞にここまで“取り憑かれている”のか?」“来年こそ”を誓う男の執念を解剖

有馬侑之介 アクセス  

自己愛と誇示の狭間で トランプ大統領、ノーベル平和賞を狙う
権力と富を手中に収め、次回の受賞候補に名を連ねる

引用:ホワイトハウス
引用:ホワイトハウス

来年、ドナルド・トランプ米大統領がノーベル平和賞を受賞するか注目されている。

ノーベル賞の発表が行われる毎年10月は、世界の関心が最も高まる時期とされる。中でも平和賞は最大の注目を集める。

物理学賞や経済学賞、文学賞などが専門分野の研究者や作家に授与されるのに対し、平和賞は一般にも広く知られた人物が選ばれる傾向があるためだ。

今年は、世界を揺るがせた「話題の人物」トランプ大統領の受賞可能性が取り沙汰され、例年以上に注目を集めた。最終的に栄誉はベネズエラの野党指導者マリア・コリーナ・マチャド氏に授与されたが、トランプ大統領は来年の受賞に強い期待を示した。権力と富を手中に収めたトランプ大統領が、なおノーベル平和賞を求める理由はどこにあるのか。

トランプ大統領がノーベル平和賞を意識し始めたのは第1期執権期にさかのぼる。米共和党議員らは2018年5月、トランプ大統領が北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記との首脳会談を実現し、朝鮮半島の非核化と朝鮮戦争終結に向けて取り組んだとして、翌2019年のノーベル平和賞候補に推薦された。

特に2019年に受賞者に選ばれれば、第100回のノーベル平和賞という節目に当たることから、トランプ大統領も大きな期待を寄せていた。

しかし、同年のノーベル平和賞はエリトリアとの戦争終結に尽力した功績が評価され、エチオピアのアビー・アハメド首相に授与された。トランプ大統領はこれに対し、「ノーベル委員会は授賞を公平に行っていない」と公の場で不満を表明した。

アハメド首相は翌年、数千人の死傷者を出した「ティグレ紛争」を引き起こし、国際社会から批判を受けた。

トランプ大統領は2020年、イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)、バーレーンが外交関係を樹立した平和協定「アブラハム合意」を主導したとして、ノーベル平和賞候補に挙がったが、受賞はならなかった。

2024年も同様の理由で候補に挙がったが、受賞者には選ばれなかった。これについて、米時事週刊誌「タイム」は「相次ぐ落選がトランプ大統領の自尊心と名誉欲をかき立てた」と分析した。

また、トランプ大統領が政敵とされるバラク・オバマ前大統領の受賞に影響を受け、ノーベル平和賞への執着を強めているとの見方もある。オバマ前大統領は2009年に受賞したが、米国の大統領としてはセオドア・ルーズベルト(1906年)、ウッドロー・ウィルソン(1920年)、ジミー・カーター(2002年)に続く4人目だった。

トランプ大統領は、オバマ前大統領が顕著な成果を挙げないまま受賞したと繰り返し不満を表してきた。受賞者発表を翌日に控えた9月9日、取材陣に対し「オバマは大統領に当選した直後に授与された」と発言した。

支持率の下落が続くトランプ大統領が、政治的目的からノーベル平和賞を狙っているとの分析も出ている。2026年11月には米国中間選挙が予定されており、10月の受賞者発表でトランプ大統領が選ばれれば、支持層の結束を強化する効果があるとされる。

9月、トランプ大統領は「私は受賞を望んでいない。米国が受賞することを望んでいる。私が受賞できないなら、それは米国への侮辱だ」とし、ナショナリズムを意識した発言をした。米国はオバマ前大統領以降、ノーベル平和賞受賞者を輩出していない。

ノーベル平和賞は、スウェーデン・ストックホルムで授賞式を行う他の五部門とは異なり、ノルウェー・オスロで授与される。創設者アルフレッド・ノーベル氏が遺言で、平和賞のみはノルウェー議会が審査・授与を行うよう定めたためだ。

平和賞の受賞者を選定するノーベル委員会は、ノルウェー議会が指名した五人で構成されている。委員には最終決定の過程で独立した判断が保障されている。

ノーベル委員会の事務局長、クリスティアン・ベルグ・ハルプヴィーケン氏は9月、トランプ大統領の受賞をめぐる関心の高まりに触れ、「特定の候補にメディアの注目が集まることは承知している。ただし、委員会の議論がそうした影響を受けることはない。委員会は各候補を資質に応じて検討している」と明らかにした。

しかし、ノーベル平和賞は選定基準が不明確で、政治的判断が介入するとの指摘も絶えない。

1973年、ベトナム戦争の休戦に尽力したとして選ばれたヘンリー・キッシンジャー元米国務長官は、同時にカンボジアへの秘密爆撃を主導していた。このため、ノーベル委員会の委員二人が抗議の意を示して辞任した事例もある。ミャンマーの軍事独裁に非暴力で抵抗したアウンサンスーチー氏(1991年受賞)も、ムスリム系少数民族ロヒンギャの虐殺に沈黙したことで論争を招いた。

トランプ大統領はすでに次回(2026年)のノーベル平和賞候補に挙がっている。パキスタン政府は6月、トランプ大統領がインドとの紛争に断固として介入したとして候補に推薦したと発表した。

また、今年に入ってガザ地区の戦闘を含む八つの国際紛争を解決したと強調するなど、早くも自らの功績をアピールしている。

トランプ大統領がガザ地区の戦闘を完全に終結させ、ウクライナ戦争の停戦を実現すれば、受賞の可能性は一段と高まるとみられている。

8日、ガザ地区の休戦交渉が発表されると、米国のベッティングサイト「ポリマーケット」でトランプ大統領の受賞確率は2.7%から6%へ急上昇した。

一方、トランプ大統領の「米国第一主義」や不法移民の強硬取締り政策、治安維持を名目とした主要都市への州兵投入、保守派活動家チャーリー・カーク氏の死を機に宣言した「イデオロギー戦争」などは、受賞資格を巡る論争を招く可能性がある。

米国のコラムニスト、トーマス・フリードマン氏は米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)で「トランプ大統領は、米国の長年の敵であるハマスでさえ信頼させることができた。米国内でも同じアプローチを試みてほしい」と論じた。

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