合格者100人は全員解雇に…人民法院が判決公表

公務員試験を含む国家試験で、実に89回にわたって「代理受験」が行われていた組織的不正が発覚した。高学歴者で構成された専門チームが7年間にわたり中国各地で試験を代行し、このルートで不正合格した100人あまりは公職に就いたものの、事件発覚後、全員が解雇された。6日付の上海メディア「上観新聞」は、事件を審理した広東省高要区人民法院が公開した判決文の内容を報じている。
高学歴メンバーで「代理受験チーム」を組織
報道によると、張氏、陸氏、李氏らは2014年から2020年にかけて高学歴者を集め、国家試験の代理受験を請け負う組織を立ち上げた。テンセントQQや微信(WeChat)のグループチャット、オンライン広告などを通じて受験希望者を募り、受験票の偽造や写真の合成、当日のなりすまし受験までワンストップで請け負っていたという。
対象者が決まると、チーム内から顔立ちの似た同性の「受験要員」を選び出し、合成写真を使って受験票や身分証を偽造した上で、本物になりすまして試験会場に送り込んだ。試験会場での本人確認の盲点を巧妙かつ執拗に突き、組織的に不正を貫いた形だ。
手数料は7年で約2億円超 公安機関職員も解雇
このグループは公務員試験や各種国家資格試験などで、中国の10以上の省・市にまたがり、合計89回の試験を代行したとされる。これまでに受け取った代理受験の報酬は延べ1,000万元(約2億円超)に達したとみられている。
不正合格者は地方政府、公安機関、農村関連機関などさまざまな部署に採用されていたが、事件の摘発後は全員が解雇処分となった。
裁判所は首謀格16人に対し、国家試験における組織的な不正行為の罪を適用し、懲役5年〜5年6か月と罰金刑を言い渡した。身分証の偽造に関わった黄氏は公文書偽造罪で、試験に替え玉として実際に臨んだ18人は代理受験の罪でそれぞれ有罪判決を受けた。控訴した被告もいたが、いずれも退けられている。
司法当局は、この事件について「単なるカンニングの域を超え、公務員試験の公正性と国家的な人材選抜システムへの信頼を損なう重大な犯罪だ」と強調した。総元締め、実行役、受験生が一体となった構造的な犯行だったことから、今後は高度な本人認証技術の導入や監督体制の強化など、制度面の立て直しが急務だと指摘している。
中国刑法第284条第1項は、国家指定試験で組織的な不正行為を行った場合、3年以上7年以下の懲役と罰金を科すと定めており、代理受験者も処罰の対象となる。
判決の中で裁判官は受験生に向け、「人生の夢は本来、自らの努力で叶えるべきものだ」と述べ、「不正行為によって得た成果は、消えない汚点となって一生つきまとい、取り返しのつかない代償を招きかねない」と警告した。
2026年国家公務員試験 平均倍率は98倍
一方、こうしたリスクを冒してまで代理受験ビジネスが横行する背景には、中国の公務員試験の競争激化があるとされる。国家公務員局の発表によれば、2026年度の国家公務員試験には延べ371万8,000人が出願した。
採用予定は約3万8,100人にとどまり、平均倍率は約98倍に達する。人気の高い職種では、わずか1人の募集に7,500人以上の志願者が殺到したケースもあり、狭き門となっている。













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