ロシアが西欧へ侵攻する危険が高まっているとの警戒感が欧州で強まる中、ドイツはポーランドに武器を供与すべきだとの提案が浮上した。地政学的にドイツとロシアの間に位置するポーランドは、仮にロシア軍がドイツなど西欧を攻撃する場合、進軍の通路になり得るとの見方が背景にある。

dpa通信によると、ドイツの元高官外交官でミュンヘン安全保障会議(MSC)前議長のボルフガング・イッシンガー氏(79)は8日(現地時間)、独紙『ディ・ヴェルト』のインタビューで、ポーランドの防衛力強化に向け、潜水艦や駆逐艦、戦車などを支援するよう独政府に求めた。
MSCは1963年から毎年初めにドイツ・ミュンヘンで開かれる国際会議で、各国の首脳級や閣僚級が安全保障政策を議論する場として知られる。今年は13〜15日に開催予定だ。
イッシンガー氏は、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻以降、ドイツが国防費を大幅に積み増してきた点に触れた。さらに、2025年5月に就任したフリードリヒ・メルツ独首相が、ドイツ連邦軍を欧州で最強の通常戦力にする方針を掲げていることも踏まえ、国防への巨額投資の一部をポーランド支援に振り向ける余地は十分にあるとの見方を示した。
提案の狙いとしてイッシンガー氏は、ポーランドがドイツに求めている戦後補償問題の打開にもつながり得ると説明した。第2次世界大戦(1939〜1945年)でナチス・ドイツの占領統治を受け、人命や財産に甚大な被害を被ったポーランドは、過去の清算として補償を求める立場を崩していない。報道によれば、2025年9月にベルリンを訪れたカロル・ナブロツキ・ポーランド大統領は、1兆3,000億ユーロ(約240兆円)規模の請求を提示したという。
これに対しドイツ側は、1970年代に西ドイツがポーランドへ巨額の融資を供与したことに加え、戦時中の強制労働に動員されたポーランド人48万人へ個別補償を行ったことで、問題は決着済みだとの認識が強い。ただ、補償要求が続く中で関係悪化を避けるには、一定の誠意を示す必要があるとの声も独政府内にあるとされる。最新装備の供与でポーランドの防衛力を底上げできれば、ロシア軍がポーランド領を通過して西欧へ攻勢をかける事態の抑止にもつながり、歴史問題の緊張緩和にも資するというのがイッシンガー氏の問題提起だ。
同氏はまた、ドイツの再軍備が周辺国の不安を増幅させる恐れがあるとも指摘した。第2次世界大戦でナチス・ドイツが軍事力を背景に欧州各地へ侵攻した記憶が根強いからだという。欧州のパートナーに対し、国防投資は再び支配者になるためではなく、欧州全体の防衛力を高めるためだと明確に理解させる必要があるとも訴えた。
イッシンガー氏は1975年に外交官としての経歴を開始し、独外務省次官を経て、米ジョージ・W・ブッシュ政権期の2001〜2006年に駐米ドイツ大使を務めた。その後、2008年から2022年まで14年間にわたりMSC議長として会議を率いた。














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