
米中央軍(CENTCOM)は14日(現地時間)、イランの主要な原油輸出拠点であるハールグ島(Kharg)にある海軍の機雷貯蔵施設やミサイルバンカーなど、約90カ所の軍事目標を精密攻撃したと発表した。一方で、石油インフラは攻撃対象から外した。これまで米国とイスラエルはイラン各地への空爆を続けてきたが、ハールグ島だけは攻撃対象から除外してきた。イランの原油輸出の9割が通過する「生命線」を断てば、国際原油価格をはじめ、経済面と外交面の影響があまりにも大きいためだ。ハールグ島を「イランの至宝」と呼んだトランプ氏はこの日の取材で、「節度を保つため、この島の石油インフラは破壊しないことにした。ただ、面白半分でさらに数回攻撃する可能性もある」と述べ、追加攻撃の可能性を示唆した。仮に米国がハールグ島の石油施設にまで攻撃対象を広げれば、「パンドラの箱」を開けることになりかねないとの見方が出ている。
水深が深い戦略的要衝
ハールグ島は、ペルシャ湾に位置するイランの原油輸出ターミナルの中核拠点だ。イラン本土の海岸から約26キロ、ホルムズ海峡の北西約483キロに位置するサンゴ礁の島で、面積は約20平方キロメートルと、ニューヨーク・マンハッタンの3分の1ほどにすぎない。それでもハールグ島が原油輸出の中枢となった背景には、地形的な条件がある。イランの海岸線の大部分は泥質で水深が浅く、超大型タンカーが接近しにくい。一方、ハールグ島周辺は水深が深く、大型船の接岸が可能だ。かつては真珠や農産物が取引される貿易港だったが、1960年代にパフラヴィー朝時代の政策のもと、米石油会社アモコとの合弁事業によって石油ターミナルとして開発された。
イラン経済にとって、この島への依存度は極めて高い。世界の原油供給の約4.5%を担うイランの輸出量のうち、9割がこの島を経由する。アフヴァーズ、マルーン、ガチサランなど国内有数の油田で生産された原油は、パイプラインでハールグ島に運ばれた後、タンカーに積み込まれ、ホルムズ海峡とアラビア海を経て輸出される。ロイター通信によると、イランは今年、日量平均170万バレルの原油を輸出しており、このうち155万バレルがハールグ島を経由した。戦争直前には日量約217万バレルに達し、2月16日の週には過去最高となる日量379万バレルを出荷したこともあった。JPモルガンの報告書によると、ハールグ島の貯蔵能力は約3000万バレルで、今月初めの時点では約1800万バレルの原油を保有していた。
ハールグ島攻撃は「越えてはならない一線」
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、ハールグ島の施設は外部からの攻撃に対して脆弱な状態にある。南側に集中する数十基の貯蔵タンク、超大型タンカーに原油を積み込むため沖合へ延びる長い埠頭、作業員らの居住区、本土と結ぶ小規模な滑走路などはいずれも攻撃対象になり得る。海底パイプラインは、ターミナルとイラン最大級の油田を結んでいる。このため、1980年代のイラン・イラク戦争ではイラク軍の爆撃を受けたこともある。イスラエル側はこれまでも、ハールグ島を攻撃対象に含めるべきだと主張してきた。イスラエル最大野党イェシュ・アティッドの党首、ヤイル・ラピド氏は「ハールグ島にあるすべての油田と関連施設を破壊すべきだ。それがイラン経済をまひさせ、政権を崩壊に追い込む手段になる」と述べた。
ただ、攻撃の余波は極めて大きく、国際原油価格を大きく押し上げる恐れがある。米エネルギー投資の専門家ダン・ピッカリング氏はロイター通信に対し、「ハールグ島のインフラが破壊されれば、市場から日量200万バレルが恒久的に失われる」と語った。原油関連施設まで失われれば、イラン経済が立ち直れないほどの打撃を受ける可能性もある。元米イラン担当副特使のリチャード・ネフュー氏はFTに対し、「この島を失えば、イラン経済は壊滅的な打撃を受ける」と述べた。こうした事情から、米国もこれまでハールグ島への攻撃を「越えてはならない一線」とみなしてきた。さらに、イランの石油輸出の大半が中国向けであることを踏まえると、ハールグ島への攻撃は中国との摩擦を招く恐れもある。中国は、イランが海上輸出する石油の8割以上を購入しているとされる。
イラン、UAEに報復攻撃
イランはハールグ島への攻撃に即座に反発した。報復として、アラブ首長国連邦(UAE)の主要エネルギー拠点に向け、弾道ミサイル9発とドローン33機を発射したと発表した。また、ドバイのジュベル・アリ港、アブダビのハリファ港、UAEのフジャイラ港周辺の住民に避難を呼びかけるとともに、湾岸地域にある米系銀行の支店も攻撃対象に含まれると主張した。この影響で、世界有数の船舶燃料供給拠点であるUAEのフジャイラでは、一部の原油積み込み作業が中断された。ホワイトハウスは、地上部隊を投入してハールグ島を制圧する案も検討したとされる。ただ、仮に制圧に成功しても、イラン本土からの反撃を封じるために作戦範囲がさらに拡大する可能性があるとの指摘が出ている。
















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