
ドローンに搭載された熱画像センサーが戦場を支配する中、兵士が身を隠す余地は急速に失われている。森林や暗闇に潜伏していても、体温由来の熱信号が捕捉される「可視化された戦場」が現実のものとなる中、米海兵隊は兵士の熱源を遮断する新型カモフラージュ装備の導入を決定した。
米海兵隊は、赤外線および熱信号を大幅に低減させ、探知を困難にする「多光スペクトルカモフラージュ・オーバーガーメント」の開発に向け、民間企業への公募を実施した。肉眼による視認だけでなく、暗視装置や赤外線センサー、熱画像カメラといった多種多様な監視デバイスから兵士を隠匿することを目的としている。
本装備は、既存の軍服や個人装備の上から着用するマント状の設計が想定されている。海兵隊の要求仕様によれば、完全武装の状態でも15秒以内に着脱可能な構造であり、極限の温度環境や多岐にわたる地形でも機能を維持する必要がある。軍当局は、この装置を兵士個人の熱および赤外線の痕跡を管理する「個別信号管理(Individual Signature Management:ISM)」技術の中核を成す装備と位置づけている。米軍は2030年までに約6万1,000着を確保する計画だ。
ドローンが作り出した「可視化された戦場」において、従来の迷彩服はもはや十分な隠蔽効果を発揮し得ない。ドローンの熱画像センサーは、兵士の体温を明確な赤外線信号として捉え、即座に位置を特定する。特にウクライナでの実戦を通じ、ドローンが捕捉した座標がリアルタイムで砲兵部隊に伝達され、「発見が即座に撃破に繋がる」環境が一般化した。かつての統合参謀本部議長マーク・ミリー氏も、議会証言において「捕捉されれば直ちに攻撃対象となる」と述べ、熱信号管理の重要性を強調していた。
このような環境下では、歩兵にも航空機と同様の「ステルス性」が求められる。海兵隊が推進する新型装備は、近赤外線(NIR)から熱検知に用いられる中・長波赤外線(MWIR/LWIR)領域に至るまで、幅広い波長のセンサーに対する信号を抑制することを目指している。マント状の形状は、兵士の身体的特徴や装備の輪郭を曖昧にする効果もあり、ドローンの画像認識AIによる自動検知を妨害する狙いもあるとみられる。
歩兵の戦術自体も変容を余儀なくされている。ドローンの攻撃範囲内に兵力が集中することを避ける「分散配置」が基本となり、携帯型電波妨害装置(ジャマー)が標準装備化されつつある。移動時には熱信号抑制ガーメントを使用し、静止時には赤外線反射を抑えるカモフラージュネットを展張する戦術が定着している。
ドローンとセンサー技術の進化に対し、それを隠蔽する技術もまた進化を続ける。軍当局は、この「矛と盾」の競争が今後も継続すると予測している。専門家は、将来の戦場における歩兵の生存率は、火力の優劣以上に「いかに探知を免れるか」というステルス能力に左右される可能性が高いと分析している。













コメント0