
イラン戦争による航空燃料の供給混乱が、過去の米同時多発テロや2008年の金融危機時に匹敵する水準に達しているとの警告が出た。国際航空運送協会(IATA)は、米国とイランの停戦合意によってホルムズ海峡再開の可能性が出てきたものの、破壊された中東の製油施設の復旧に時間を要するため、航空燃料価格が従来の水準に戻るまでには相当な時間がかかるとみている。
IATAのウィリー・ウォルシュ事務総長は今週、記者団に対し、「海峡が再び開かれ、その状態が維持されたとしても、中東の精製能力が大きく損なわれている。供給が正常な軌道に戻るまでには、なお数カ月かかる」と強調した。
とりわけ危機を深刻化させているのは、原油には戦略備蓄で衝撃を和らげる仕組みがある一方、航空燃料にはそうした備蓄システムが存在しない点だ。このため航空各社の懸念は一段と強まっている。
実際、S&Pグローバルのエネルギーデータによると、紛争地域の製油施設停止により、世界の精製能力は10~12%程度減少した。これは1日当たり200万バレル以上の精製能力が失われた計算になる。
この影響で、デルタ航空とユナイテッド航空はそれぞれ約4億ドル(約635億円)の運営コストの上昇に直面した。航空会社はすでに手荷物料金を引き上げたり、燃油サーチャージを4割近く引き上げるなど、苦肉の策を迫られている。
ウォルシュ事務総長は、現在の状況について、航空需要そのものが消失したパンデミック期とは異なるとしながらも、インフラ破壊という点では米同時多発テロ後の復旧過程と似ていると指摘した。当時は、旅客需要と運航能力の回復に約4カ月から1年ほどかかった。
航空業界で40年の経験を持つタイ国際航空のチャイ・イアムシリCEOも「今回の危機で最も深刻なのは、基盤となるインフラが破壊された点だ」としたうえで、「精製施設と物流網を立て直すには長い時間が必要になる」と訴えた。
ユナイテッド航空のスコット・カービーCEOは、原油価格が2027年まで1バレルあたり100ドル(約1万6000円)を下回らない可能性も視野に入れ、最悪のシナリオに備えていると明らかにした。結局のところ、海峡再開という外交的成果とは別に、破壊されたエネルギー供給網の物理的な復旧が完了しない限り、航空業界の高コスト局面は当面続く見通しだ。
















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