引用:日産
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電気自動車(EV)が特別な存在ではなくなりつつある。街中で見かける機会が増えただけでなく、実際の購入を検討する層も広がってきた。NHKの報道によると、2026年1〜6月の国内EV乗用車の新車販売台数は約6万台で、前年同期の2倍以上に増加した。一方で、新車販売全体に占めるEV・PHEVの比率はまだ5%に届いておらず(業界集計によると5月時点で4.70%)、台数自体は着実に伸びているものの、本格的な普及期に入るにはもう少し時間がかかりそうだ。

販売台数が増える一方で、EVならではの特性を運転者が正しく理解しておくことの重要性も増している。見た目は従来のガソリン車とほとんど変わらないが、構造や走行性能は異なる点が多い。特に梅雨時期など路面状況が悪化する場面では、EVの特性をあらかじめ知っておくことで事故や故障を未然に防げるという。

冠水路は「安全だが油断は禁物」 バッテリーは防水でも過信は危険

近年、夏場のゲリラ豪雨や冠水被害が増えるにつれ、梅雨時のEVの安全性に関心が集まっている。「冠水した道路をEVで走っても大丈夫か」「雨の日に屋外で充電しても問題ないか」――こうした疑問は、EVに不慣れなドライバーの間で毎年のように話題に上る、いわば漠然とした不安の表れだ。

比較的新しいEVには、最新の安全機構が幅広く搭載されている。電気を主動力とする以上、水分は本来「相性の悪い」存在であり、メーカー各社はその対策を徹底してきた。車両下部に配置されたバッテリーパックは防水処理が施されており、仮に水に浸かっても内部への浸水は防がれる設計だ。高電圧回路は車体そのものとは絶縁されているため、通常の冠水程度であれば車体に触れても感電にはつながらないとされる。

ただし、実際に冠水を経験した車両については話が別だ。国土交通省と日本自動車連盟(JAF)は、「むやみにエンジン(起動スイッチ)を入れない」「ハイブリッド車(HV)やEVはむやみに触らない」「必要に応じてバッテリーのマイナス端子を外す」よう繰り返し注意喚起している。水が引いた後も、電気系統のショートによって発火するおそれがあるためだ。メーカーの安全設計を過信せず、そもそも危険な状況を避けることが「ベスト」だと言える。

見落とされがちなのが車両重量の違いだ。EVは大容量バッテリーを積む分、同クラスのガソリン車より200〜500kg(一般的には300〜400kg程度)重くなる。例えば日産の軽自動車では、ガソリン車の「デイズ」(940kg)とEVの「サクラ」(1080kg)の差は150kgに達する。重量が増える分、最低地上高が低めに設定されている車種も多く、冠水路を通過する際、ガソリン車ならタイヤの半分程度まで浸かっても大きな問題にならないところ、EVはタイヤの3分の1が浸かった時点で注意が必要というのが業界の共通認識だ。

自動車業界関係者は「EVがいくら防水性能に優れていても、経年劣化が進めば話は変わってくる。できるだけ水を避けるに越したことはない」と話す。「特に冠水した道路では、車両下部のバッテリーに水が触れないよう、迂回路を探すべきだ」との指摘もある。段差や縁石を乗り越える際にも、バッテリーが収められた車両下部に衝撃を与えないよう注意が必要だという。下部が衝撃で損傷すると、わずかな隙間から水分が浸入する可能性があり、それが発火などの事故や故障につながりかねない。

雨天時の屋外充電、「できれば避けたい」が業界の本音

雨の日の屋外充電は、EVオーナーが最も不安を感じる場面の一つだ。日産の公式案内によれば、EVの充電は充電コネクタを車両に差し込んだ後、車両と充電器の間で通信が成立して初めて電流が流れる仕組みになっており、接続前のコネクタが多少濡れていても感電の危険性は低いとされる。ただし、濡れた手で充電プラグを扱うことは感電につながるおそれがあるため避けるべきで、大雨や冠水によって車両やコンセント周辺が水に浸かっている場合、また雷が鳴っている場合は充電そのものを控えるよう案内されている。

それでも自動車の専門家たちは、雨天時の屋外充電はできるだけ避けるよう勧めている。業界関係者は「EVの安全性はここ数年でほとんど事故が起きないレベルまで進化したが、業界としても100%安全とまでは言い切れないのが実情だ」とした上で、「雨の日はできるだけ屋内の充電スポットを利用するか、雨がやんでから充電するのが望ましい」と話す。

高トルクゆえの落とし穴 タイヤの溝、法定基準ギリギリでは危険

EVは雨天走行でも独特の注意が求められる。ガソリン車より重い車体は、それだけタイヤの摩耗を早める傾向がある。加えて、EVはトルク(車軸を回転させる瞬間的な力)が大きく、発進時にタイヤへかかる摩擦が増すため、摩耗の進行も速い。タイヤのトレッド(接地面)がすり減ると、雨天時に水膜現象(ハイドロプレーニング)が起きやすくなり、制動力を失う。車体が重いEVは、一般的なガソリン車よりも大きく滑るリスクが高いとされる。

こうした特性を踏まえ、業界ではEV専用に設計されたタイヤの装着を必須とすべきだとの声が強い。トレッドの状態を定期的に確認し、適切なタイミングで交換することも欠かせない。法律上は、道路運送車両の保安基準の細目を定める告示第89条により、タイヤの残り溝を1.6mm以上に保つことが義務付けられている。ただし、ブリヂストンが2011年に実施した試験(水深6mm、時速80km条件)では、使用限界とされる残り溝1.6mmのタイヤはほとんど路面に接地できておらず、3.5mmの状態でも排水性能の低下が確認された。このため業界では、性能が著しく落ちる前の残り溝4mmを目安とした交換が推奨されている。

EVならではの高いトルク性能も、雨天走行では常に念頭に置く必要がある。強い初期加速力によって、EVは一般的なガソリン車よりゼロヨン(静止状態から時速100kmに達するまでの時間)が短い。ドライバーからすれば、アクセルを軽く踏んだだけで車が跳ねるように飛び出す感覚を覚えることもある。

自動車業界関係者は「雨天時、あふれるトルクを制御しきれずに滑ってしまうケースが起こり得る」と指摘した上で、「EVならではの運転感覚を、日頃から体に染み込ませておく必要がある」と強調した。

山田雅彦
山田雅彦

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