
米国とフィリピンが主導する多国籍の定例軍事演習「バリカタン」が行われている南シナ海で、軍事的緊張が高まっている。陸上自衛隊が初めて同演習に加わり、過去最大級の規模で進むなか、中国も最新鋭の空母戦力を相次いで展開し、対抗姿勢を強めている。
中国海軍は21日、次世代強襲揚陸艦「四川」が実戦訓練のため南シナ海へ出航したと発表した。2024年12月に進水したこの艦艇は、大規模な上陸作戦を支援できるうえ、ヘリコプターや戦闘機に加えて無人機も運用できるとされる。「世界初のドローン空母」とも呼ばれており、台湾周辺や南シナ海で軍事衝突が起きた場合に即応投入される最新戦力の一つとみられる。
これに先立つ20日には、中国初の空母「遼寧」が台湾海峡を通過する様子を台湾軍が確認した。甲板には最新型戦闘機J-15が8機、ヘリコプター3機が搭載されていたという。遼寧も南シナ海へ向かった可能性が高いとみられている。
中国側は、四川の出航について性能試験が目的であり、特定の国を念頭に置いたものではないと説明した。一方で、遼寧の展開については言及を避けている。ただ、精鋭の海軍戦力を相次いで南シナ海へ送り込んだ背景には、20日に始まった「バリカタン」があるとの分析が出ている。
これまで自衛隊は、バリカタンでは人道支援や災害救援など限られた分野への参加にとどまってきた。昨年は海上自衛隊が正式参加に踏み切り、今回は航空機と陸上自衛隊員1,000人を含む計1,400人余りを投入した。規模は米国、フィリピンに次ぐ水準となっている。
南シナ海は、米中の覇権争いの最前線とされる海域だ。中国は一方的に設定した「九段線」を根拠に広範囲の領有権を主張し、東南アジア各国との摩擦を続けてきた。フィリピンは自国沿岸の海域を「西フィリピン海」と呼び、中国と鋭く対立している。そこに米国の支援強化と自衛隊の関与拡大が重なり、3か国の軍事的な結び付きは一段と目立つようになった。昨年11月の高市早苗首相による「台湾有事」発言をきっかけに日中間の対立が強まり、中国と日米比3か国の対峙構図がさらに鮮明になっているとの見方もある。
今年のバリカタンは、表向きにはフィリピンの領土防衛や航行の自由の確保を掲げている。ただ、訓練内容を見れば、実質的には中国抑止を意識した演習との分析が強い。過去最大級の規模で行われる今回は、海上安全保障、上陸作戦、兵站支援などが盛り込まれた。これまで対象外だったサイバー分野や宇宙分野の訓練も加わっている。
中国のけん制は、演習開始の3日前から本格化した。17日には、海上自衛隊の護衛艦「いかづち」が神奈川県横須賀港を出港し、訓練先のフィリピンへ向かう途中で台湾海峡を通過した。自衛隊艦艇による台湾海峡通過は、2024年9月以降で4回目となる。この日が、日清戦争後に清が台湾を割譲した下関条約の締結日に当たっていたこともあり、中国側は強く反発した。官営メディアでは、あえてこの日を選び中国人民の感情を深く傷つけた、新たな軍国主義を加速させる意図的な挑発だといった非難が相次いだ。
台湾海峡を管轄する中国人民解放軍東部戦区は、その翌日の18日に東シナ海で軍事演習を実施した。続く19日には、駆逐艦とフリゲート艦2隻を、沖縄と九州の間に位置する奄美大島と横当島の間へ通過させている。これに対し、外務省も20日、中国が日中中間線の西側海域で新たな構造物の設置を始めたとして、東シナ海の排他的経済水域(EEZ)と大陸棚の境界が定まっていない中で一方的な開発を進めるのは遺憾だと批判した。
南シナ海を巡る緊張は、当面続く可能性が高い。自衛隊はバリカタンに続き、6~7月にフィリピンで行われる米比海兵隊の共同訓練「カマンダグ」にも参加すると報じられている。
















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