「治療法なし」のがん患者に新たな希望…新薬で腫瘍が30%縮小

免疫療法も効かなかったがん患者に、新たな治療の可能性が示された。がん細胞が免疫系から隠れる仕組みを阻害する新薬が、免疫チェックポイント阻害薬の効果を回復させ、腫瘍を30%以上縮小させた患者がいたことが初期臨床試験で確認された。従来治療と免疫療法のいずれも効果がなく、治療選択肢が限られていた患者を対象にした結果として注目されている。
英マンチェスターのクリスティ病院の研究チームは、5月29日から6月2日まで米シカゴで開かれた米国臨床腫瘍学会(ASCO)の年次学術大会で、実験薬「GRWD5769」と免疫チェックポイント阻害薬セミプリマブを併用した第1相臨床試験の結果を発表した。
臨床試験には、子宮頸がん、膀胱がん、肝がん、大腸がん、肺がん、頭頸部がんの患者83人が参加した。このうち26人で腫瘍が縮小し、15人では腫瘍の大きさが30%以上減少した。いずれも従来治療と免疫療法の効果が十分に得られなかった患者だった。
がんの進行を抑える効果も、がんの種類ごとに確認された。6か月以上にわたり進行が抑えられた割合は、子宮頸がんで18%、肝がんで32%、膀胱がんで36%、頭頸部がんで38%だった。大腸がんと肺がんではさらに高く、大腸がん患者の51%、肺がん患者の55%で6か月以上進行が抑制された。半数以上の患者で、がんの増大が一定期間抑えられたことになる。
免疫チェックポイント阻害薬は、T細胞の働きを利用してがん細胞を攻撃する治療法だ。T細胞は体内で異常な細胞を見つけると攻撃し、取り除く。がん細胞の表面には正常な細胞とは異なるタンパク質の断片である抗原が現れ、T細胞はそれを認識して攻撃する。
ただ、がん細胞はさまざまな方法でT細胞の認識を逃れる。その一つが、小胞体アミノペプチダーゼ1(ERAP1)という酵素を異常に働かせる仕組みだ。ERAP1は、細胞内でタンパク質の断片をT細胞が認識しやすい長さに切りそろえる役割を持つ。
ERAP1が異常に働くと、タンパク質の断片がT細胞に認識されにくい形に変わる。その結果、T細胞はがん細胞を見つけられず、免疫チェックポイント阻害薬も十分な効果を発揮できなくなる。これが、免疫療法が患者の約3分の2で効果を示さない主な原因の一つとされている。
「GRWD5769」はERAP1を阻害し、がん細胞が免疫から隠れる仕組みを遮断する。免疫から隠れていたがん細胞が再び免疫系に認識されることで、効果を失っていた免疫チェックポイント阻害薬ががん細胞を再び攻撃しやすい環境を作る狙いがある。
製薬・バイオスタートアップのGreywolf Therapeuticsが開発したこの薬は錠剤タイプで、自宅でも服用できる。臨床試験では、多くの参加者が大きな副作用なく服用を続けたという。
研究に参加していない英国がん研究所のサミュエル・ゴッドフリー研究員は、英紙ガーディアンに対し、「従来治療が効かなくなった患者を対象に、複数の難治性がんでこうした結果が出たのは異例だ」と評価した。一方で、「効果が持続するかを確認するには、大規模な追加試験が必要だ」とも指摘した。
研究チームは今後、より多くの患者を対象にした大規模な追加臨床試験を計画している。













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