米国はオマーン沿岸の航行を支援
イランは自国側の航路利用のみ要求
別航路を通る商船を攻撃

6月18日に発効した米国とイランの60日間の休戦が、わずか3週間で崩壊に向かっている。米国のドナルド・トランプ大統領は8日、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で「休戦は終わった」と宣言した後、イラン南部の港湾やホルムズ海峡周辺の軍事施設に対する追加空爆を承認した。米中央軍は、その後に攻撃を実施したと明らかにしている。トランプ大統領は、ペルシャ湾にあるイラン最大の石油輸出拠点であるハルグ島も空爆対象に含まれると述べたが、実際に攻撃が行われたかどうかは分かっていない。
トランプ大統領はイラン指導部について、「これ以上、くずのような人間たちとは関わりたくない」と述べ、「イランは病んだ者たちに率いられている国だ」とも非難した。首脳会議への出席を終えた帰国便では、「イランから少し前に電話があり、彼らは合意を切望している」と説明する一方、「交渉内容をきちんと履行するかは分からない」と不信感をあらわにした。
イランもクウェートとバーレーンにある米軍基地を狙い、ミサイルと無人機による攻撃で対抗した。イラン国内でも緊張が高まっている。前最高指導者であるアヤトラ・アリ・ハメネイ師の葬儀が3日目を迎えた6日、交渉派で対米穏健派のイランのマスード・ペゼシュキアン大統領が、殺到した群衆に巻き込まれそうになった。米国との交渉実務を統括してきたイランのアッバス・アラグチ外相は群衆が投げた石を受けたと、米紙ニューヨーク・タイムズが報じている。
今回の衝突の発端となったのは、ホルムズ海峡を巡る対立である。米国とイランは終戦に関する了解覚書(MOU)で、ホルムズ海峡の航行再開について原則的に合意しただけで、どちらが船舶の通航を管理・統制するかは明確に定めなかった。
この曖昧さが、休戦体制を揺るがす最大の火種になったとの見方が出ている。双方が不明確な条項を自国に有利な形で解釈しているためだ。
ホルムズ海峡はイランとオマーンの間に位置する。米国は、協力関係にある湾岸諸国側のオマーン沿岸に沿って南側航路を利用できるよう、船舶の航行を支援してきた。米海軍は駆逐艦を投入して夜間の護衛まで実施し、100隻を超える船舶の通航を助けたとされる。
一方、イランは自国に近い北側航路だけを利用するよう要求した。米国の支援を受けて南側航路を通った商船をイランが攻撃したため、米国は休戦違反と判断し、空爆と制裁を再開した。これに対し、イランは米国が一方的に合意を破棄したと反発している。
イランがホルムズ海峡の管理権に固執するのは、同海峡が最も強力な交渉材料となるからだ。世界の海上原油輸送量の約20%が通過するホルムズ海峡を掌握し、外交上のてことして利用すれば、国際原油価格や世界のエネルギー市場を揺さぶり、米国を追い込むことも可能になる。今回の戦争を通じ、その影響力の大きさが改めて証明された。
このため、イラン革命防衛隊(IRGC)は同海峡の通航を自国の主権に関わる問題と位置付け、外国船の移動を統制しようとしてきた。今回の終戦に関するMOUでは、ホルムズ海峡を通る船舶について、60日間の無料通航を保障している。
イランはこの期間が終了した後、経済難を打開するための施策の一つとして、通航料の徴収を進める方針だ。イラン側にとっては、海峡の管理権を確保することで、こうした計画を実行しやすくなる可能性がある。
イランのモハンマド・バーゲル・ガリバフ国会議長は、「ホルムズ海峡は米国の脅しによってではなく、イランの方式に従って開かれる」と述べ、自国が管理権を握る意向を強調した。
これに対し、米国は「航行の自由」を掲げ、「国際海域で特定の国が通航を制限することは受け入れられない」とイランに圧力をかけている。南シナ海や台湾海峡など、中国と海洋覇権を争う地域で主張してきた「航行の自由」の原則を、ホルムズ海峡にも適用する構えだ。
ホルムズ海峡を自国の管理下に置こうとする米国とイランの立場が真っ向から対立するなか、イランの核物質の処理など主要な争点を後続協議に先送りした暫定的な合意の構造的欠陥が、限界を露呈しているとの分析も出ている。
米外交問題評議会(CFR)は8日、「米国とイランの休戦は崩壊寸前にあり、ホルムズ海峡を通じた正常な海上交通が回復する可能性も低下している」と指摘した。さらに、「休戦が維持されたとしても、通航料や機雷除去、インフラ被害などの問題が、実質的な航行回復を阻む重大な障害として残っている」と分析している。













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