「円高を諦め始めた」...1ドル163円、39年ぶり安値で160円台が“日常”になるのか

21日のニューヨーク外国為替市場で、円相場は1986年以来初めて一時1ドル=163円台まで下落した。中東情勢が急速に緊迫化し、ドルを買う動きが強まったことが大きな要因となった。
一方、最近公表された高市政権の経済財政運営の基本方針「骨太の方針」を巡り、財政拡大や日銀の独立性に対する懸念が広がった「骨太ショック」も、円安を加速させたとの分析が出ている。こうした警戒感から日本国債の売りが続いてきたためだ。政府は21日、日銀の独立性に配慮する文言を加えた「骨太の方針」を閣議決定したものの、市場を落ち着かせる効果は見られない。
円相場については、1ドル=160円台がニューノーマルになるとの見方も浮上している。政府が外国為替市場への介入に踏み切ったとしても、その効果は限定的にとどまるとの見方が強い。
りそなホールディングスの井口慶一シニアストラテジストは「円高を予想していた企業も、今では諦めて円安予想に転じ始めた」と述べ、160円台がニューノーマルになる可能性を指摘した。円を売る材料は多い一方、買い材料が乏しいという事情がある。
高市政権が発足した2025年10月当時、円相場は1ドル=147円前後だった。しかし、足元では162円台まで下落し、一時は39年半ぶりの安値水準に沈んだ。
一連の動きには、中東情勢だけでなく、高市政権が進める財政拡大を通じた成長戦略や、日銀の利上げをけん制しようとする姿勢も影響しているとの分析が出ている。

高市政権は、最近策定した「骨太の方針」から従来の「財政健全化」という表現を削除し、政府投資を拡大する「責任ある積極財政」を掲げた。また、これまで政府が目標としてきたプライマリーバランス(基礎的財政収支、PB)の黒字化を目標とせず、必要な投資がある場合には収支の一時的な悪化を容認する方針を示した。
さらに、「『強い経済』の実現には、適切な金融政策運営が行われることも極めて重要だ」「政府と日銀は緊密に連携し、十分な意思疎通を図る」などと記した。こうした表現は、政府が日銀の金利決定に関与しようとしているとの印象を市場に与えかねない。
これを受け、債券市場では日本国債の売りが相次いだ。今月初めには、長期金利の指標となる10年物国債の利回りが急騰し、一時2.9%まで上昇して30年ぶりの高水準となっている。
市場の反応が想定以上に深刻化したため、高市政権は最終案の策定過程で表現を修正した。21日に閣議決定した最終案には、注釈として「金融政策の具体的な手段については日銀に委ねる」との内容も加えられた。しかし、こうした文言を追加しても、市場への影響を打ち消すには至らない。
このため、円安が「サナエノミクス」の最大のアキレス腱になるとの懸念が強まっている。原油価格の上昇で原材料価格が高騰するなか、円安によって企業の調達コストが急増しているためだ。
かつては円安が輸出企業にプラスに働くと考えられていた。しかし、コストの上昇幅が大きすぎるため、企業が増加分を消費者価格に十分転嫁できない可能性も指摘されている。ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミストは日本経済新聞に対し、「輸出型企業も国内で製品を販売するケースが多いため、過度な円安はマイナスだ」と指摘している。
円安によって経営難に陥る企業も増えている。東京商工リサーチによると、円安の影響による企業倒産は2026年上半期に45件発生し、前年同期比で30%増となった。
















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