テスラの株価は前日6%超下落した後、12日(現地時間)のニューヨーク市場の取引開始前にも1.2%下落し、324ドル(約5万円)を記録している。テスラ株は5営業日連続で下落し、16%の下落幅となっている。1月20日のトランプ政権発足以降、株価は約23%下落した。

投資家がテスラの株価下落の主因として挙げたのは、テスラCEOイーロン・マスク氏の政治活動とOpenAIの買収提案だ。一方で、一部の専門家は、自動運転技術の恩恵がテスラだけに限られるわけではないと指摘している。

12日(現地時間)、バロンズがXで実施した投資家世論調査によると、テスラ株下落の最大の要因として、マスク氏の政府効率化局(DOGE)活動を挙げた投資家が34.3%を占めた。次いで、29.8%の投資家がOpenAIの買収提案を株価下落の原因として選択。市場の偶然性を理由に挙げた回答は26.5%、中国BYDの自動運転技術を懸念した投資家は10.3%だった。

投資家はDOGE活動によってマスク氏の注意が大きく分散するだけでなく、主要顧客層の間でブランドイメージが損なわれていることを懸念している。従来、電気自動車(EV)は共和党支持者よりも民主党支持者の購入割合が圧倒的に高かった。

ガーバー・カワサキCEOのロス・ガーバー氏は「テスラのブランドは今や崩壊した」との見解を示した。EVを選ぶ消費者は環境問題に関心を持つ傾向があるが、ここ1、2年のマスク氏の政治活動が、テスラが掲げる環境配慮のイメージを損なったという。また、OpenAIの買収提案は、マスク氏の注意散漫が深刻であることを改めて示した。

特に、投資家がOpenAIの買収提案を懸念する理由の一つとして、買収が実現すれば、資金調達のためにテスラ株の大規模な売却が避けられない点が挙げられる。マスク氏は2022年のツイッター買収の際も、テスラ株を売却しないと約束しながら、大量の株に売り抜けた経緯がある。さらに、OpenAIの買収にはツイッター以上の多額の資金が必要となるため、市場の混乱が拡大する可能性も指摘されている。

一方で、テスラの投資家は依然として自動運転技術に大きな期待を寄せている。テスラ株価は昨年10月10日のロボタクシーイベント以降、依然として38%高い水準にある。

共同創業者のゲイリー・ブラック氏は、「マスク氏の注意散漫も問題だが、それ以上にBYDの動向を無視できない」と指摘した。BYDは今週初め、価格に関係なくすべての車両に運転支援技術を搭載すると発表。これにより、テスラのFSD(完全自動運転)との競争が激化する可能性がある。ブラック氏は「今後、多くの企業が自動運転技術を持つようになり、その恩恵がテスラだけに集中すると限らない」と分析した。

全ての鉄鋼製品に対する25%の関税も、自動車株には悪材料となる。ゼネラルモーターズやフォードなどの自動車メーカーも過去5日間で株価が下落した。マーケットウォッチは、「鉄鋼製品に25%の関税が課された場合、生産コストが1台あたり1,000ドル(約15万4,000円)から2,000ドル(約30万8,000円)上昇する可能性がある」と分析している。

収益性の低下も懸念される。テスラの第4四半期決算は市場予想を下回り、今年第1四半期の1株当たり利益予想(アナリストコンセンサス)は、過去数週間で75セント(約116円)から55セント(約85円)に引き下げられた。また、アナリストは第1四半期の車両納入台数予想も引き下げ続けている。これは、中国や欧州など主要市場での販売減少に加え、更新されたモデルYの発売待ちや、年末に予定されている低価格モデルの発売を見越した需要の先送りが影響しているとみられる。いずれにせよ、利益予想の下方修正は株価にとってマイナス要因だ。

キャップジシスの創業者で技術アナリストのフランク・カッペレーリ氏とフェアリード・ストラテジーズのアナリスト、ウィル・タンプリン氏は、テスラ株の支持線を315ドル(約4万9,000円)と見ている。さらに、選挙前後の株価水準である270ドル(約4万2,000円)が維持されるかどうかが、今後の動向を占う上で重要な指標になると指摘した。ただし、テスラ株の変動性が高いため、両氏は「根本的な方向性を断言するのは難しく、投資家の取引パターンを注視する必要がある」と述べた。

マーケットウォッチは、「状況を一変させる可能性があるのは、新モデルの発売と自動運転ロボタクシーサービスの開始だ」と指摘。さらに、「マスク氏がOpenAIの買収を断念するか、ワシントンの政治から距離を置けば、テスラにとって好材料になるだろう」と見解を示した。

荒巻俊
荒巻俊

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