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EV拡大でリチウム争奪戦が激化!中国は供給網を「独占支配」…欧米の脱炭素政策に黄信号

織田昌大 アクセス  

2030年、リチウム供給不足が現実に

EV電池で需要急増…中・米・EUで供給バランスに懸念

バッテリーのリチウム使用量を減らす研究が活発化

ナトリウム・マグネシウムなど代替資源を活用 実用化にはなお時間

引用:depositphotos
引用:depositphotos

電気自動車(EV)の需要が拡大する中、現在EV用バッテリーの主要素材であるリチウムが、2030年には中国や欧米で深刻な供給不足に陥るとの予測が発表された。各国が際限なく輸入競争を続けた場合、EVの普及によるカーボンニュートラル(脱炭素)目標の達成にも遅れが生じる可能性があるという。こうした状況を受け、リチウムの使用量を削減する次世代バッテリー技術や、豊富な資源を活用するナトリウムイオン電池など、代替技術の確保を急ぐべきだとの声が高まっている。

「2030年までにリチウム需要を満たすのは困難」

中国の華東師範大学とスウェーデンのルンド大学による共同研究チームは、世界のEV市場の約80%を占める中国、欧州、米国を中心に、リチウムの需要および各国の採掘能力、輸入の可能性、貿易構造を分析し、今回の結論に至ったという。この研究結果は、国際学術誌『セル・リポーツ・サステナビリティ(Cell Reports Sustainability)』にて、12日(現地時間)に掲載された。

研究チームは、「現在のリチウムは、産業革命当時の化石燃料に匹敵するほど戦略的な資源だ」とし、「各国間のリチウム争奪戦は、単なる供給問題にとどまらず、気候目標を巡る国際的な秩序の安定にも悪影響を及ぼしかねない」と警告している。

研究チームが中国、欧州連合(EU)、米国において想定される16のリチウム需給シナリオを分析した結果、各国が現在推進しているリチウム鉱山開発計画がすべて実現したとしても、2030年までに国内需要を完全に満たすことは難しいことが分かった。2030年までに必要とされるリチウムの推定量は、中国で最大131万9,000トン、欧州で79万2,000トン、米国で69万2,000トンに上ると見られている。しかし、それぞれの国の最大生産可能量は、中国が116万3,000トン、欧州が32万5,000トン、米国が61万トンにとどまり、明確な需給ギャップが生じることが予想されている。

リチウム供給の「ボトルネック(供給の障害)」は、各国の国内採掘の見通しだけにとどまらない。研究チームは、中国・欧州・米国の3地域がリチウム需要に対応するため輸入を拡大しようとした場合、相互の貿易構造において競争が発生すると予測している。ある国の輸入拡大が、他地域の輸入量に直接的な影響を及ぼすという見方だ。シミュレーションの結果、中国がリチウムの輸入量を現在より77%増やした場合、米国の輸入は84%減少し、欧州は78%減少するという試算が示された。逆に、欧州が輸入を最大限に拡大すると、中国の輸入量は最大で94%減少することが予測された。

これは、3地域の主要なリチウム供給国が重複しているためである。現在、チリは世界最大のリチウム炭酸輸出国であり、オーストラリアはリチウム鉱石の最大生産国となっている。特にオーストラリア産の鉱石は、中国がほぼ独占的に輸入・加工しているのが現状だ。研究チームは、こうした供給網が特定の国に集中したまま、各国が競争的に輸入量を増やすと、価格の高騰や貿易摩擦、さらには政治的対立に発展する恐れがあると警鐘を鳴らしている。

近い将来、世界的なリチウム供給不足が予測されているものの、リサイクルや代替資源の活用による対応は簡単ではないと見られている。EV用バッテリーの寿命が長いため、2030年までに再利用可能な使用済みバッテリーは限定的で、全体需要の6%程度にとどまるとされている。今後5〜6年は、ほぼ全面的に新たな鉱山採掘に依存せざるを得ない状況だ。

こうしたリチウム供給不足に備え、研究チームは国家レベルでの対応戦略を提言している。まず挙げられるのは生産能力の拡大だ。研究チームは「米国は高い採掘ポテンシャルを持つ国であり、輸入依存度を大きく下げることが可能であるため、政府主導による許認可の簡素化や持続可能な鉱山運営に向けた政策が必要だ」と指摘し、「個人向けEVの普及拡大よりも、公共交通インフラの整備といった需要そのものを抑える取り組みを検討すべきだ」と強調した。

「リチウム使用量を削減し、豊富な代替資源の活用を」

研究チームは特に、バッテリーに含まれるリチウムの使用量を減らすか、ナトリウムイオンなど非リチウム系バッテリーの実用化を早めることで、リチウム需要を大幅に抑えることができると説明している。

急増するリチウム需要に対応するため、学界や産業界では関連する研究開発が活発に進められている。リチウム含有量を抑える代表的な技術としては、従来のコバルトやニッケルの代わりにリン酸鉄を正極材に用いるリン酸鉄リチウム(LFP)バッテリーが挙げられる。リン酸鉄は、同じ容量のバッテリーを製造する場合でも、コバルトやニッケルよりも使用されるリチウムの量が少ない。

また、従来のリチウムイオン電池で使用されている液体電解質の代わりに、固体電解質を活用する技術の研究も進められている。電解質はリチウムイオンを正極から負極へ移動させ、リチウムの化学エネルギーを電気エネルギーに変換する役割を果たす。固体電解質は液体に比べてエネルギー密度が高く、より少ないリチウムでより多くのエネルギーを蓄えることが可能になるという。

リチウムに代わる資源を活用した次世代バッテリーとして、ナトリウムイオン電池が有望視されている。海水などから容易に確保できるナトリウムを用いて電気を蓄え、放出する仕組みだ。ただし、リチウムを使用した場合と比べてエネルギー密度が低く、重量や体積が増えるといった課題が残されている。

ナトリウムと同様に地球上に豊富に存在するマグネシウムを用いたマグネシウムイオン電池も、リチウムの代替候補として注目されている。マグネシウムイオンはリチウムイオンとは異なり、2価の電荷を持つため、理論上は正極から負極へ移動する際により多くの電気を運ぶことができる。米マサチューセッツ工科大学(MIT)などが実用化に向けた技術開発に取り組んでいるが、現時点ではまだ初期研究の段階にある。また、マグネシウムよりもさらに多くの電荷(3価)を持つアルミニウムベースのバッテリーも次世代技術として期待されているが、こちらも商業化にはなお時間がかかると見られている。

織田昌大
//= the_author_meta('email'); ?>editor@kangnamtimes.com

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