
ポーランド政府は、防衛産業の国産化を強化すべく、榴弾砲用弾薬の国内生産を5倍に引き上げる方針を示した。ウクライナ戦争を契機に弾薬需要が急増する中、自給体制の構築が急務となっている。
国家資産省のヤクブ・ヤヴォロフスキ大臣は、英『フィナンシャル・タイムズ』のインタビューで、国営防衛企業PGZが政府から24億ズウォティ(約957億6,241万円)の資金供与を受け、NATO基準の155ミリ砲弾や主力戦車用120ミリ砲弾の生産体制を拡充する計画だと明らかにした。現在、年間約3万発にとどまる大口径砲弾の生産量を、今後3年以内に15万〜18万発まで引き上げることを目指すという。
ヤヴォロフスキ大臣は「155ミリ砲弾は現代戦の中核をなす装備だ。ウクライナ戦争を見ても、大量供給できる体制の確保が急務だ」と述べ、外部依存を脱却し、自律的な防衛体制を構築することの重要性を強調した。
ポーランドは今年、GDPの4.7%を国防費に充てており、NATO加盟国の中でも突出した水準にある。これまでの軍事支出の多くはアメリカや韓国からの兵器調達に向けられてきたが、ドナルド・トゥスク政権は、今後は国内生産能力の底上げに注力する方針だ。
昨年11月には、弾薬生産能力の強化を目的として、ポーランド議会が7億ユーロ(約1,184億8,260万円)の公共投資を承認。これに続き、同国最大の化学企業アゾティは、爆発物用化学物質の製造分野に進出すべく公的資金を申請しているほか、防衛企業ニエディアドゥフも155ミリ砲弾生産のための資金援助を要請している。
欧州全体で防衛産業の再構築が進む中、ポーランドの動きは今後のNATO東側諸国の防衛戦略にも大きな影響を及ぼすとみられている。
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