カトマンズ市長バレンドラ・シャー氏、首相候補として有力視
既成政権を崩したZ世代デモの受け皿を狙う

ネパールで、ラッパー出身の若手政治家がZ世代の反腐敗感情を追い風に、首相の座を狙う動きが注目を集めている。30年以上にわたり政権を担ってきた既成政党と既得権層は、若年層を中心とする強い反発に直面している。
3月5日に実施される総選挙では、カトマンズ市長のバレンドラ・シャー氏が、若者を主な支持層とする新たな政治連携の「首相候補」として前面に立つ構図となった。
報道によると、シャー氏はテレビ番組司会者出身の政治家で、国民独立党の党首を務めるラビ・ラミチャネ氏が率いる国民独立党に合流した。同党が総選挙で勝利した場合、シャー氏が首相に就任し、ラミチャネ氏は党首にとどまることで合意したという。両氏が事実上の政治連合を組む形となる。
シャー氏はアンダーグラウンドのラッパーとして知られ、腐敗や特権層を批判する歌詞で若年層の支持を広げてきた。2022年の地方選挙では大政党の組織支援を受けずにカトマンズ市長に当選し、音楽シーンから行政のトップに転じた象徴的な存在として認知された。
若者の政治的不満が表面化したのは、昨年9月に起きた大規模な反腐敗・反政府デモだった。いわゆるZ世代デモは全国的な広がりを見せ、死者が出る混乱に発展し、当時のK・P・シャルマ・オリ首相は辞任に追い込まれた。参加者の中心は10代後半から20代で、既成政党や国家システムに対し、腐敗の連鎖を断ち切るよう強く求めたとされる。
シャー氏はデモの最中、動画配信やソーシャルメディアのライブを通じて若者に呼びかけ、政治の世代交代と腐敗撲滅を求める声を代弁した。デモ後に新たに有権者名簿へ登録された若年層が増えたとされるなか、既成政治に距離のある人物への期待が強まっている。
ネパール政治は長年、ネパール共産党統一マルクス・レーニン主義派と、穏健系のネパール会議派が軸となって政権を争ってきた。だが若年層の間では、両勢力が長期の腐敗や停滞の元凶だという見方が根強く、デモでも批判の対象となった。
シャー氏とラミチャネ氏は、ラップや動画、短い言葉で感情に訴える発信を武器に支持を広げている。特にシャー氏は市長就任後、ごみ処理や都市インフラの改善など目に見える施策を進め、実務型の政治家としての評価を高めたとされる。
一方で、既成政党側からは懐疑的な声も出ている。ネパール会議派の報道担当者は、両氏を論争の多い人物と位置づけ、連携が選挙結果を大きく左右するとは限らないとの見方を示した。ラミチャネ氏については、協同組合資金の流用をめぐる疑惑で起訴され、保釈中だとも伝えられている。
それでも、政権を揺るがした大規模デモを経験した若者の間では、完全無欠ではなくとも現状を動かし得る候補を支持するという空気が強い。政治評論家の間では、今回の選挙で新勢力がキャスティングボートを握る可能性があり、情勢次第では過半数を狙う展開もあり得るとの見方が出ている。













コメント0