
米国やイスラエルと交戦状態にあるイランが、米国など西側諸国に潜伏している「潜伏工作員」を動員する可能性があるとの指摘が出ている。
ABCニュースは9日(現地時間)、米政府がイランから発信されたとみられる暗号化通信を傍受し、これを司法当局に伝えたと報じた。米政府は、この通信が国外に潜伏する「潜伏工作員」に対し作戦開始を知らせる合図である可能性があるとみているという。
報道によると、米情報当局が傍受した暗号化通信は先月28日、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師がイスラエルの爆撃で死亡した直後、複数の国に向けて送信された。通信内容は暗号化されており、暗号キーを持つ受信者にのみ解読できる形だったとされる。こうした通信を受けたスリーパーセルは、インターネットや携帯電話ネットワークが利用できない状況でも指示を受け取ることができるとされる。
こうした潜伏工作員は、いわゆる「スリーパーセル」と呼ばれる。通常は一般市民として生活しながら潜伏し、特定の命令が下されると活動を開始する秘密組織や工作員を指す。主に情報収集や破壊工作、テロ、暗殺などを目的に、数年から数十年にわたって潜伏するケースがある。
米当局は今回の通信について、「国外に配置されたスリーパーセルを活性化させたり、指示を与えたりする意図がある可能性がある」と指摘した。一方で、「現時点でこれに関連する具体的な作戦上の脅威は確認されていない」と明らかにした。
FBIも見逃した「スリーパーセル」
米国を狙う潜伏組織の存在が広く知られるようになったのは、2001年の「アメリカ同時多発テロ事件(9・11)」が契機だった。米国内に居住していた実行犯らが事前に飛行訓練を受けたうえで旅客機を使った自爆テロを実行し、大きな衝撃を与えた。
当時、国際テロ組織のアルカイダは、英語に堪能で西洋社会で生活できる19人の「スリーパーセル」を選抜し、米国に送り込んだ。このうち4人はフロリダ州とアリゾナ州の飛行学校で訓練を受け、操縦資格を取得するなど、水面下でテロの準備を進めていた。
この過程で、連邦捜査局(FBI)の捜査官の一人が彼らの動向に不審な点があると感じ、上司に報告していた。しかし、テロ直前までFBIは特段の措置を取らなかったとされる。スリーパーセルは通常、学生や実業家、移民などの身分を装い、目立った活動を行わないため、事前に察知するのが極めて難しいとされる。
こうしたスリーパーセルは、その後も欧州各地でさまざまなテロ事件に関与してきたとされる。2021年にはスウェーデンで、アフガニスタン難民として入国していた夫婦が、イラン革命防衛隊とつながる暗殺要員である可能性があるとして逮捕された。当時、この夫婦はユダヤ人指導者の暗殺を計画していたとみられている。
2015年にはベルギーのブリュッセルで、過激派組織のイスラム国(IS)に関係するスリーパーセルが数カ月から数年にわたり潜伏した後、連続爆弾テロを実行した。2016年には、ドイツでシリア難民として入国し、1年以上潜伏していたISの要員が、音楽イベント会場の近くで自爆攻撃を行う事件も起きた。
「殉教」を強調するイラン 警戒強める西側
米国とイスラエルによるイラン空爆を受け、これまで潜伏していたスリーパーセルが活動を活発化させる可能性が指摘されており、大規模な人命被害につながるテロの脅威が高まっているとの見方が出ている。
イランはこれまでも、神権体制や最高指導者の死を「殉教」と位置づけ、政治的な宣伝材料として利用してきた。実際、米国とイスラエルによる空爆の後、イランの高位聖職者であるナーセル・マカーレム・シーラーズィー師は、すべてのムスリムが「殉教者の血」に報いる義務があるとするファトワー(イスラム法学者が示す宗教的見解)を発表し、米国とイスラエルを主な加害者だと位置づけた。
米FBIのの元副長官であるクリス・スウェッカー氏は、FOXニュースに対し、「もしヒズボラやハマスが米国内で暴力的な行動を起こす可能性があるとすれば、まさに今だ」との見方を示した。
実際、開戦翌日の3月1日には、米テキサス州のオースティンで、イラン国旗が描かれたシャツを着たセネガル国籍の男が銃撃事件を起こし、3人が死亡した。また3日には、トロントのユダヤ教会堂で銃撃の痕跡が見つかり、警察が捜査に乗り出した。さらに、ノルウェーのオスロにある米国大使館の前でも爆発が発生した。
一方、スリーパーセルの活動の可能性について、ドナルド・トランプ米大統領は「状況を注視している」としたうえで、「この問題について非常に正確な情報を把握している」と述べた。
















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