イランのカタールLNG施設攻撃で新興国に影響拡大…米・露は恩恵拡大か

米国とイスラエルによる中東での軍事衝突が3週目に入り、世界のエネルギー供給網が大きく揺らぐ中、イランによるカタールの液化天然ガス(LNG)施設への相次ぐ攻撃の影響がアジアの新興国経済に広がっている。世界最大のLNG輸出国である米国は市場で恩恵を受け、ロシアもウクライナ侵攻以降で最大の輸出拡大機会を迎えるとの見方が出ている。
ブルームバーグなどによると、新興国は2022年のウクライナ戦争以降、再びガス供給不安に直面しており、産業用ガス需要の回復が困難になるとの懸念も指摘されている。
世界第2位のLNG生産拠点であるカタールのラスラファン工業都市は今月初め、イランのドローン攻撃で稼働が停止し、その後も18日から19日にかけてミサイル攻撃を受けた。これはイスラエルによるイラン最大のガス田攻撃への報復とみられ、被害は拡大している。
カタール国営エネルギー企業カタールエナジーのサード・アルカービCEOはロイター通信の取材に対し、今回の攻撃でLNG輸出能力の約17%が損なわれ、復旧には3〜5年を要し、年間1,280万トンのLNG生産が停止する見通しだと明らかにした。
LNGは発電や産業に不可欠な燃料であり、調理や暖房など日常生活にも広く利用されている。しかし、LNGは貯蔵コストが高く、輸送にも専用設備が必要なため、石油のように大規模な長期備蓄が難しい。このため各国はカタールのラスラファン施設の被害に神経をとがらせ、対応を急いでいる。
特にインドやパキスタンなど、カタール産ガスへの依存度が高いアジアの新興国では、すでに供給不足が顕在化している。アジアはカタール産LNGの約8割を購入する最大市場であり、UAE産も含め依存度は高い。パキスタンはLNG輸入の約99%をカタールとUAEに頼っており、早ければ来月にも電力需要を満たせなくなる恐れがあると警告している。主力産業である繊維業もガス不足と電力不足の二重打撃を受けている。
インドでも調理用ガスの不足により、飲食店やホテルが一時休業するケースが相次いでいるとされる。フィリピンやベトナムはLNGの輸送コストが戦闘開始以降2倍以上に上昇したことを受け、価格が落ち着くまで購入を見送る方針だ。
米エネルギー流通企業ダベンポート・エナジーのトビー・コブソン氏は「南アジアや東南アジアが最初に打撃を受ける」とし「供給混乱が数カ月続けば価格は再び急騰する可能性がある」との見方を示した。
台湾や韓国も影響を免れない。両国はカタール産LNGの不足分を補うため調達を進めており、韓国では石炭火力発電の稼働制限を緩和する措置が取られている。
イラン戦争の長期化が見込まれる中、アジアと欧州の間でLNG確保競争が激化する可能性も指摘されている。国際ガス連盟(IGU)のメネラオス・イドレオス事務総長は「価格が上昇すれば富裕国は購入を続けるが、途上国は市場から排除される」と述べ「ホルムズ海峡経由の供給は代替が難しい」と強調した。
一方で、米国とロシアはLNG市場で恩恵を受けている。需要の代替先として米国産LNGへの引き合いが強まり、米国内の施設は高稼働を維持した。カタール施設の攻撃後には米国のLNG関連企業の株価も上昇した。
ロシアは2022年のウクライナ侵攻以降、欧州市場を失ったが、今回の事態で中国向け輸出拡大の機会が生まれている。中国は最近の5カ年計画で「中露中央ルート」ガスパイプラインの建設加速を打ち出しており、中東情勢の不安定化を受けてエネルギー戦略の見直しを進めている。













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