イラン戦争を契機に、米国が国際社会に提供してきた「安全神話」が崩れ、中東各国が自力で生き残りを図る動きを強めている。地域の安全保障を主導してきた米国の不在を前提に、生存戦略を新たに練り直し始めている。

米・サウジアラビア「安全保障」の暗黙の合意崩壊…疑念が確信へ
27日、日本経済新聞によると、サウジアラビア、パキスタン、トルコなどが参加する安全保障グループの外相会合が先月末、パキスタンのイスラマバードで開かれたという。パキスタンの「核の傘」の下でスンニ派諸国を結集し、シーア派のイランに対抗する構想だ。サウジアラビアとパキスタンが昨年、一方への攻撃を両国への攻撃とみなす北大西洋条約機構(NATO)型の相互防衛協定を結んだことが土台となった。
注目されるのは、このグループの事実上の後ろ盾が中国である点だ。会合直後、パキスタンのイシャク・ダル外相が直ちに中国へ向かったことがその証拠とみられる。同紙は「中国は中東の覇権争いで自ら弱体化する米国を、ただ見ていればよかった」と評した。
アラブ首長国連邦(UAE)アブダビのサディヤット島には、砂漠の中にイスラム教のモスク、キリスト教の教会、ユダヤ教のシナゴーグが並んで建つ。トランプ第1次政権時代に成立した、イスラエルと一部アラブ諸国の国交正常化合意「アブラハム合意」を記念し、平和と共存の象徴として建設された施設だ。しかし現在は訪問者がほとんど見られず、事実上放置されている。同紙はこれを「空虚な理想の残骸」と評した。
中東地域で死者が急増していることも、域内各国の安全保障意識を高めている。2023年10月のガザ地区衝突以降、パレスチナ人7万人以上、イスラエル人2,000人以上、イラン人3,000人以上が死亡している。
この過程でイランは革命防衛隊主導のより強硬な体制へと再編され、抑え込まれていた対立が再燃し、強者がルールを破る前例も生まれた。トランプ大統領は「交渉の達人」を自任しているが、明確なビジョンもないまま軍事介入に踏み切り、事態の収拾どころか既存秩序まで壊したとの指摘が出ている。
1945年2月、当時のフランクリン・ルーズベルト米大統領はヤルタ会談後の帰途、スエズ運河でサウジアラビア初代国王アブドゥルアズィーズと会談し、サウジアラビアが石油を安定的に供給する代わりに、米国が国家の安全と航路を守るという「暗黙の契約」を結んだ。それから80年が経った現在、トランプ大統領がイランの憎悪に火をつけたまま、事実上問題を放置しているとの見方が広がり、「危機が起きても米国は来ないかもしれない」という疑念が確信に近づいている。
ある日本のベテラン外交官は、迷走する米国の軍事・外交と、それに伴う中東の混乱を「てんでんこ」、つまり各国が自力で生き残りを図る状態だと表現している。米ジョンズ・ホプキンス大学大学院のハル・ブランズ教授は、「セルフヘルプ」の時代が到来したと指摘した。
米国の空白を埋める中国…サウジアラビアは最悪を避け「次善の策」選択
米国が中東への関与を弱める中、中国はサウジアラビア・パキスタン安全保障グループの事実上の後ろ盾として存在感を高め、影響力の拡大を加速させている。パキスタンが今回のイラン戦の停戦仲介に乗り出した背景にも、「一帯一路」で結ばれた中国の影響力が作用したとの見方がある。中国としては、自ら前面に出ることなく、パキスタンを通じて中東紛争の調停者としての地位を確保した格好だ。
サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマーン皇太子は、トランプ大統領にイラン攻撃を強く求めた指導者として知られる。米国がイランの核脅威の排除も代理勢力ネットワークの解体も完了しないまま中東を離れることは、サウジアラビアにとって最悪のシナリオだ。結局サウジアラビアは、中国の影響圏に片足を踏み入れる負担を覚悟してでも、パキスタンの核の傘という「次善策」を選んだ。次善策に頼らざるを得ない各国の動きの一端といえる。
ブランズ教授は「10年前であれば、米中、米ロ間の新冷戦は最悪のシナリオとみなされていたが、今では米国が民主主義陣営のリーダーとして復帰してくれることが、われわれの最大の希望になった」と述べた。
米国は国際秩序を守るどころか、中国やロシアとともに既存ルールの修正に乗り出しているとの指摘だ。日本経済新聞は「その行き着く先は、力と取引が支配する弱肉強食の社会だ」とし、「その中では米国でさえ捕食者になり得ることに警戒すべきだ」と警告した。













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