
イランがホルムズ海峡の通航制限を強化し、世界のエネルギー市場に圧力をかける一方で、米国側の港湾封鎖措置なども絡み合い、結果的にはイラン経済の方が先に限界に近づいているとの見方が出ている。
国内では失業者の増加が進み、食料品価格の高騰も続くなど、経済状況は一段と悪化している。こうした中、イラン政府が戦争の終結と封鎖解除を交換条件とする交渉案を提示した背景には、深刻化する国内経済の逼迫があるとの分析が広がっている。
28日(現地時間)、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、イランがホルムズ海峡の封鎖解除の条件として、米国によるイランの港湾に対する海上封鎖の解除を求める提案を、地域の仲介者に最近伝えていたと報じた。イランは海峡での攻撃停止と戦争終結を交換条件とする一方、核開発問題については後日の協議事項とする立場だと伝えられている。
ホルムズ海峡は、世界の原油および液化天然ガス(LNG)の約5分の1が通過する重要な海上輸送路だ。イランは戦闘初期に同海峡の通航を制限し、世界経済に圧力をかける手段として活用した。一方、米国はイランの港湾に対する海上封鎖で対抗した。こうした措置の応酬により、イランの原油輸出は大きく制約されるとともに、主要な輸入物資の流入も滞り、国内経済への影響が急速に拡大している。
イランの協同組合・労働・社会福祉省関係者が示した初期推計によると、戦闘の影響で約100万人が直接的に職を失い、さらに約100万人が間接的に失業の影響を受けたという。
物価上昇も加速しており、イラン中央銀行の統計によると、4月中旬までの1年間のインフレ率は67%に達した。海上輸入に依存していた赤身肉については、補助金適用価格でも1ポンドあたり約3.6ドル(約580円)まで上昇し、月の最低賃金が約130ドル(約2万800円)水準にある庶民層にとって、生活負担は一段と重くなっている。
企業部門も耐え難い局面に直面している。製造業や小売業の一部では閉鎖が相次いでおり、鉄鋼などの原材料不足により生産活動にも支障が出ている。電子製品のように輸入依存度の高い品目では、供給不足と価格上昇が同時に進んでいる。さらに、米国とイスラエルによる空爆の影響で、道路や港湾、住宅に加え、主要な鉄鋼・石油化学施設にも被害が及んだとされる。戦後の復旧・再建費用は約2,700億ドル(約43兆3,000億円)に達するとの推計も出ている。
イラン政府は経済への打撃を和らげるため、最低賃金や公務員給与の引き上げを実施するとともに、パンや燃料などの必需品に対する補助金を継続している。低所得層には現金給付や食料品クーポンを配布し、戦略備蓄物資の放出も行うことで、生活必需品の不足緩和を図っている。
一方、国民に対し、水道・電力・ガスの使用削減や公共交通機関の利用拡大を呼びかけているほか、鉄鋼製品の輸出禁止といった保護措置も導入している。
イランは米国による封鎖を回避するため、トルコ、アルメニア、アゼルバイジャンとつながる鉄道網や、北部のカスピ海航路を活用している。ただ、こうした迂回ルートだけでは原油輸出の制約や輸入物流の縮小を補うのは難しいとの見方が多い。米国は、イランが経済的な圧力に先に屈するとの見方を示している一方、イラン側は、国際的な原油価格やガソリン価格への影響から、米国も長期間にわたり封鎖を維持することは難しいとみている。
ウォール・ストリート・ジャーナルは、ホルムズ海峡を巡る対立が長期化するほど、真っ先に代償を負うのはイラン国民になる可能性が高いと伝えている。
中東研究所のアレックス・バタンカ上級研究員は、「経済的圧力を国家の誇りの問題として位置づけることはできるが、資金が枯渇するにつれて政治的不満が拡大する恐れがある」と指摘した。また、バージニア工科大学のジャバド・サレヒ・イスパハニ教授は、「戦争終結後には、貧困に陥った国民をどのように管理するかが新たな課題となる」と述べた。














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