
世界経済は、過去最大規模の設備投資(CAPEX)サイクルに突入している。2029年末までに投じられる資本は約5兆ドル(約783兆4,000億円)に達すると見込まれており、この動きはAI分野に限った現象ではない。
アルファベット、アマゾン、メタ、マイクロソフトといったAIハイパースケーラーが毎年数千億ドル規模の投資を行う一方で、エネルギー分野も同様に「資本の津波」と呼ばれる状況に直面している。特にイラン戦争やホルムズ海峡の封鎖といった地政学リスクは、「エネルギー安全保障」という課題を浮き彫りにし、投資の流れをさらに加速させている。
資産運用会社TCWのポートフォリオマネージャー、エリー・ホートン氏は「現在の世界経済は過去最大規模の資本サイクルにあり、その中心はエネルギー転換にある」と分析した。同氏は今回の投資ブームの3大要因として、エネルギー安全保障、電力需要の急増、脱炭素化の取り組みを挙げた。
過去20年間停滞していた米国の電力需要は、製造業の復活、経済全体の電化、そして近年のAIブームが重なり、再び急速に増加している。
この流れの最大の恩恵を受けている企業として、キャタピラーとGEベルノバが挙げられる。建設・鉱山機械や発電設備を手掛けるキャタピラーは、この設備投資サイクルの波に乗り見事な復活を果たした。長年停滞していたガスタービン市場も活況を呈しており、GEベルノバのガスタービンはすでに2030年分の受注が埋まっている。世界でガスタービンを製造できる企業がわずか3社しかないことを踏まえると、その交渉力は極めて強い。
エネルギー転換と歩調を合わせるAI分野の設備投資も急拡大している。バンク・オブ・アメリカは、ハイパースケーラーの今年の設備投資額が前年比67%増の8,000億ドル(約125兆4,000億円)を超えると見込んでいる。来年には1兆ドル(約156兆7,000億円)に達する可能性もあると見ている。
その巨額資金の多くは、高騰する半導体価格に吸収されている。ハイパースケーラーの投資はデータセンター向け計算能力を提供する半導体企業へと流れ込み、AIインフラを支えている。バンク・オブ・アメリカは「主要なコンピューティングおよびネットワーキング企業はコスト増を顧客に転嫁できるため、AI半導体ベンダーの価格決定力と利益率は堅調に維持される」と予測した。
つまり現在の世界経済は、AIによる「デジタル転換」とエネルギーによる「物理インフラ転換」が同時に進行し、巨大な資本の渦を生み出している状況にある。専門家はこの流れが今後数十年にわたって続く強力な長期成長の原動力になると確信している。













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