トランプ政権のホルムズ海峡保険構想、2カ月で契約ゼロ
チャブやAIG参加も利用実績なし
船主ら「保険より乗組員と船舶の安全確保が優先」

ドナルド・トランプ米大統領が打ち出したホルムズ海峡向け船舶保険プログラムが、開始から2カ月間で1件も契約実績を上げていないことが分かった。
保険料支援よりも海軍による護衛や物理的な安全確保がより重要視されているためとの見方が出ている。
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、トランプ大統領は今年3月、ホルムズ海峡を航行する船舶に対して米国が「非常に合理的な価格」で保険を提供すると表明した。
しかし、同プログラムによる保険契約実績は現在まで0ドルにとどまっているという。
米政府は当初、米保険大手のチャブとAIGを支援企業として参加させ、プログラム規模を最大400億ドル(約6兆4,000億円)に設定していた。
ただし、業界関係者の間では「この構想は当初から十分機能していなかった」との見方が強い。
保険仲介業者らは、この制度が海峡通航船舶に必要な条件を十分満たしていなかった上、米海軍による護衛と連動していたものの、実際の護衛体制が整備されていなかったと指摘している。
米国は今月初め、商船通航支援の短期作戦「プロジェクト・フリーダム」で船舶2隻を護衛したが、その後、米軍支援を受けた船舶は確認されていない。
このプログラムは米国際開発金融公社(DFC)が運営している。
トランプ大統領は以前、SNSで「DFCに対し、湾岸地域、特にエネルギー関連海上貿易の金融安定化に向け、政治リスク保険と保証を提供するよう指示した」と明らかにしていた。
チャブの報道担当者は「DFCプログラムは海軍護衛下にある船舶へ保険を提供することが目的だった」と説明し「実際に護衛が行われなかったため、利用もなかった」と述べた。
海上保険市場の構造も今回の構想の限界を浮き彫りにした。
世界の海上保険の多くは英ロイズ保険市場を通じて引き受けられている。
一部では、米政府支援による新たな保険構想が英国主導の海上保険市場に変化をもたらすとの見方もあったが、実際の需要にはつながらなかった。
世界最大の保険仲介会社マーシュの海上保険部門責任者であるマーカス・ベイカー氏は「貿易再開は船主らが資産や乗組員を通航させられるほど安全だと感じるかにかかっている」と指摘した。
湾岸地域の船舶保険料も戦争前と比べ大幅に上昇している。
現在の保険料率は船舶価値の3~8%水準に達しており、一部保険商品では無事故時にボーナスを支払う仕組みも導入されている。
戦争前の保険料率は船舶価値の1%を大きく下回る水準だった。
被害拡大も船主らの警戒感を高めている。
国際海事機関(IMO)によると、紛争開始以降、少なくとも38隻が攻撃や被弾を受け、乗組員11人が死亡したという。
保険があっても船舶や乗組員が直接危険にさらされる状況では、通航再開への動機付けは限定的との分析が出ている。
ベイカー氏は「インド政府が別途準備している海運保険制度の方が、米国の制度より成功する可能性がある」との見方を示した。
インドの制度は海軍支援と連動せず、資本供給に重点を置いているためだ。
FTは「保険によって実際の物流を回復させるには、軍事護衛条件よりもリスク資本を供給する仕組みの方が現実的であることを示唆している」と伝えた。
















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