
米国のドナルド・トランプ大統領が自ら統制する米国政府と事実上「セルフ合意」を通じて巨額の救済基金を作ろうとした疑惑が浮上し、米裁判所が合意の過程に制動をかけ調査に乗り出した。トランプ大統領一族と政治的な同盟者に利益が回る可能性のある構造を巡り、元裁判官らまで問題を提起し、論争が拡大している。
ニューヨーク・タイムズ(NYT)は5月29日(現地時間)、米フロリダ州マイアミの連邦地方裁判所のキャスリーン・ウィリアムズ裁判官が、トランプ大統領が米国内国歳入庁(IRS)を相手取った100億ドル(約1兆5,900億円)規模の訴訟を再審理すると報じた。ウィリアムズ裁判官はこの日の命令文で、当該訴訟の拙速な合意過程に「重大な疑惑」があるとし、裁判所が「欺瞞の被害者だったのか」を調査すると明らかにした。トランプ大統領側の弁護団には6月12日まで事件を正式に再開すべきか立場を提出するよう求めた。
トランプ大統領は1月にIRSを相手取り損害賠償訴訟を提起した。IRSの元契約職員が自身の税務資料をメディアに流出させ、IRSがこれを防げなかったとして、最低100億ドルの賠償を求めた。訴訟にはトランプ大統領の二人の息子とトランプ一族の企業も名を連ねた。しかしトランプ大統領は先週、突如訴訟を取り下げた。その後、米司法省はこの訴訟を終結させる代わりに政府による司法の「武器化」の被害者を救済するために18億ドル(約2,870億1,900万円)規模の基金を設立する合意文書を公開した。
論争はここから拡大した。当該の合意にはトランプ大統領と家族、そしてトランプ一族が運営する企業に税務上の利益を与える可能性のある条項も含まれていると伝えられた。トランプ大統領の一族がすでに提出した税務申告に対するIRS調査を制限する内容が盛り込まれているという。
元裁判官35名は5月27日、裁判所に意見書を提出し、この合意が司法手続きを操作したものか調査すべきだと促した。彼らはトランプ大統領がIRS訴訟を利用して自身と家族に「違法な私的利益」を提供し、議会の承認なしに納税者の金を特定の被害者への補償名目で配分しようとしたと主張した。
ウィリアムズ裁判官もこの問題に注目した。トランプ大統領が自ら指揮する政府と結託して裁判所の審査を回避しようとしたか調査すると明らかにした。トランプ大統領が一方では原告として、他方では米政府の長としての立場にあることから、実際に法的な争訟が成立するのかどうかも争点として浮上している。
批判者らは米司法省がトランプ大統領の訴訟に適切に対応せず、むしろその訴訟を根拠にトランプ大統領と政治的同盟者に利益を与える合意を作り出したと見ている。トランプ大統領側と米ホワイトハウスは報道直後、即時の立場表明を控えた。
問題の救済基金は議会でも激しい反発を招いている。ワシントン・ポスト(WP)は30日、この基金が米共和党の上院議員らの間でも強い懸念を引き起こしていると報じた。米国のトッド・ブランシュ法務長官代行が米上院の共和党議員らと会談した席で20人を超える議員が懸念を表明し、この論争は移民取締りの予算パッケージの処理にも影響を与えた。
米共和党の議員らが最も敏感に見ているのは救済の対象だ。2021年1月6日に起きた米議会議事堂襲撃事件の関係者や法執行官を相手に暴力犯罪を認めた者まで納税者の金を受け取る可能性があるとの懸念が出ている。米共和党のトム・ティリス上院議員は「あまりに馬鹿げている」と公然と反発した。
議会も資金の流れを止める手段を検討している。WPは憲法上の予算権を持つ米議会が基金を全面的に遮断したり、支給対象を制限したりする権限を有していると説明した。基金の支給を阻止したり、特定犯罪の有罪認定者を除外したり、米裁判所が承認した合意にのみ政府の補償金を支給するよう制限したりする案などが挙がっている。
今回の事件はトランプ大統領が政権2期目に入って強調してきた「政府の武器化による被害者」フレームとも絡んでいる。彼は米民主党政権と連邦機関が自身と保守陣営を政治的に弾圧したと主張してきた。しかし米裁判所と米議会は今回の合意が実際の被害補償ではなく、大統領個人と政治的同盟者に公的資金を回す手段だったのか調査しようとしている。
米裁判所が調査を本格化させれば、米司法省の高官らが合意の経緯と基金設計の過程を説明しなければならない可能性もある。トランプ大統領が自らの政府を相手に提起した訴訟を利用して自身に有利な合意を引き出したのかが核心的な争点として浮上した。













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