
台湾当局は、中国に最新の人工知能(AI)向け半導体を不正に輸出したとして企業幹部3人を逮捕した。同様の事件での摘発は初めてとされる。
台湾紙タイペイ・タイムズは1日、検察当局が、米半導体大手NVIDIAの最先端AIチップ約2,199万ドル(約35億7,200万円)相当を中国、香港、マカオへ不正に輸出したとして、技術系企業の幹部3人を逮捕したと報じた。
台湾の基隆地方裁判所は前日、台湾のIT企業「Albatron Technology」の副社長と、サーバーメーカー「Supermicro」の台湾法人の幹部2人について、勾留を決定した。
Albatron Technologyはグラフィックカードなどを手がける台湾のIT企業で、Supermicroは台湾系米国人が米国で創業したサーバーメーカーとして知られる。
台湾の検察当局はこれまでに、NVIDIAの最先端AIチップの不正輸出事件を捜査するため、技術系企業の社員6人に関連する自宅や事務所など12か所を家宅捜索したと明らかにした。
また、検察は5月、IT業界関係者3人の自宅や倉庫、作業場を捜索し、NVIDIAの最新AIチップ「GB300」を搭載したAIサーバー50台と、現金900万台湾ドル(約4,584万8,000円)を押収した。
逮捕された3人は、偽造書類を使ってNVIDIAの最新AIチップを搭載したサーバーを日本へ輸出した後、香港を経由して中国へ不正に持ち込んだ疑いが持たれている。
これまで台湾では、最先端AIチップの中国への再輸出を明確に違法とする規定がなかった。このため、今回のようにチップの不正輸出を「密輸」と認定し、大規模な家宅捜索や逮捕に踏み切ったケースは初めてとなる。
一方、米司法省は今年3月、Supermicroの共同創業者を含む同社社員3人を、総額25億ドル(約4,060億1,700万円)を超えるNVIDIAの最先端AI技術を中国へ不正に輸出しようとしたとして起訴した。
米国は、最先端のAIチップが軍事転用される恐れがあるとして、中国向けの輸出を制限している。
米外交問題評議会(CFR)の中国問題専門家、クリス・マクガイア氏は、「チップの密輸は台湾や東南アジアで極めて深刻な問題だ」とし、「同盟国が米国と足並みをそろえることが極めて重要だ」と指摘した。
今回の捜査は、米国による強い働きかけや国際的なサプライチェーン監視の強化を背景に、台湾当局が従来の「輸出管理の順守を促す」対応から一歩踏み込み、チップの密輸に刑事罰を適用する姿勢を明確にした初の事例とみられている。
台湾政府は今回の事件を受け、中国向け半導体の不正輸出を犯罪と位置付ける法改正を検討している。
一方、中国政府は半導体の自給自足を最重要課題に掲げており、5月のドナルド・トランプ米大統領の訪中時にNVIDIAの「H200」チップに対する輸出規制が解除された後も、国産チップの使用を推奨した。
密輸の対象となったNVIDIAの「GB300」は、最新の「Blackwell Ultra」アーキテクチャを採用した次世代AI向けチップで、大規模言語モデル(LLM)の学習に最適化された同社の最上位製品だ。
一方、中国が事実上輸入を見送ったNVIDIAの「H200」は、中国向けに性能を制限したモデルではないものの、「GB300」と比べると演算性能やメモリ帯域幅で大きく劣る。














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