潜水艦内で「トイレを流している最中」に沈没した潜水艦

Uボートの宿痾、トイレの汚水処理問題だった
ドイツのUボート(U-boat)はイギリス本土輸送船撃沈で大西洋の戦いの恐怖だった。だが長期潜水中のトイレ使用が致命的弱点。浅い水深でのみ汚水排出可能、深く潜水すると海水逆流の危険があった。
乗組員はバケツ・タンクに汚水を集め、浮上時に排出。臭い・衛生・重量問題で作戦継続が困難だった。

U-1206、水洗式高圧排出便器を導入
1944年に就役したU-1206(VIIC型)は最先端の高圧水洗トイレを装備。圧縮空気・バルブシステムで深い水深でも汚水を海に排出できた。
操作法は8段階のバルブ操作が複雑。専任技術兵の配置を義務化。艦長・一般乗組員の使用を禁止する規定があった。

艦長シュリットが便器操作ミスで惨事を招く
1945年4月14日、スコットランドのピーターヘッド沖水深61mで潜航中、艦長カール・アドルフ・シュリット少佐がトイレを使用。技術兵不在の中、直接バルブ操作を試みた。
バルブの順序ミスで外部通路が開放。高圧海水が汚水と共に侵入。トイレ下のバッテリー室が浸水した。

海水とバッテリーの反応で致命的な塩素ガスが発生
浸水した硫酸鉛バッテリーが塩素ガス(CO2)を発生。猛毒ガスで潜水艦内部が窒息の危機に。乗組員は咳と呼吸困難を訴えた。
艦長が急浮上を命令。重量を減らすため魚雷を発射。毒ガス被害の最小化を試みた。

浮上直後、イギリス軍の哨戒機に攻撃され全員捕虜に
浮上したU-1206はイギリスの哨戒機に発見された。爆撃・機銃掃射で乗組員1名が死亡。艦長は放棄を命令し、機密文書破棄後に自沈させた。
艦長シュリットを含む46名が捕虜となり、3名が溺死。艦長は「エンジン室にいた」と否定したが、兵士の証言でトイレのミスが確認された。

終戦24日前の「便器沈没」というアイロニー
戦争終了24日前の惨事。最新技術が原因となった悲劇。イギリスのメディアは「めちゃくちゃなUボート(Shitty U-boat)」と嘲笑した。
シュリット少佐は1948年に釈放後、法律家・新聞記者として活動し、2009年に90歳で死去。U-1206の残骸は未発見だ。

Uボートのトイレ問題から得る歴史的教訓
Uボートはトイレで作戦中止が頻発。U-1206事件後、技術改善を試みたが戦争が終了した。
現代の潜水艦はコンピュータ制御・汚水タンクを別に配置。この事件は便器のミスで沈没した唯一の事例として残っている。













コメント2
おそま
硫酸鉛と海水だからCl₂だろうね硫酸鉛PbSO₄海水NaClaq。水深61mで浅い水深での排水にあたらないんだ。恐ろしいほどのエネルギーを利用している割に直ぐ近くで活動しているのかもね。潜水艦は案外脆いかも
ななし
塩素ガスは「Cl2」です。「CO2」は二酸化炭素です。