
トイレは、どれほど入念に掃除をしてもすぐに汚れてしまう場所だ。少しでも油断をすれば、壁や角に黒カビが生え、細菌が「ピンク汚れ(ロドトルラ)」を形成する。ステンレス製のシャワーホースにもカビが発生し、清潔を保つのは容易ではない。トイレの清潔を維持するには、どのような対策が必要なのだろうか。
■汚染の元凶:トイレの水を流す際に飛散する飛沫
まず、トイレにカビや細菌が繁殖する原因を整理しよう。カビや細菌も生物であり、栄養・水分・温度の三つの条件が揃うと急激に増殖する。便器の蓋を閉じずに水を流すと、排泄物の一部が微細な飛沫となって空中に舞い上がる。この飛沫はトイレの壁や床に付着するが、そこには我々が消化できないセルロース(食物繊維)のほか、タンパク質や脂肪分が含まれている。これらはカビや細菌にとって絶好の栄養源となる。
ユニットバス形式の場合、浴室とトイレが同一空間にある。シャワーを浴びる際、皮膚に常在する細菌も供給される。皮膚の細菌の多くは石鹸と共に排水口へ流れるが、一部は水滴に閉じ込められて空間に残る。体毛や角質、さらには有機酸といった汚染物質も同様だ。なかでも皮膚常在菌の一種であるモラクセラ菌が有機酸を分解して生成する「4-メチル-3-ヘキセン酸」は、強烈な悪臭を放つ原因となる。
さらに、石鹸そのものも細菌の増殖を助ける要因となり得る。水道水に含まれるカルシウムイオンやマグネシウムイオンといった金属成分が、石鹸の成分と反応して「石鹸カス」を形成するためだ。水栓やシンクに見られる白い粉状の汚れは、水中のカルシウム成分などが作り出す石灰分である。これら石鹸カスや石灰汚れは表面が凹凸になっており、細菌が付着して生存しやすい環境を提供してしまう。
■石鹸カスと石灰汚れは「酸」で除去
トイレの汚れのメカニズムが判明したところで、効果的な清掃方法を実践しよう。石鹸カスや石灰汚れはアルカリ性の性質を持つ。したがって、酸性物質である酢やクエン酸を水に溶かして塗布することで、迅速に除去が可能だ。
トイレの壁や床、便器などを酢やクエン酸で拭き洗いした後、炭酸ナトリウム(炭酸ソーダ)やセスキ炭酸ソーダを水に溶かして再度拭き取るのが理想的だ。これにより、残っていた油分が完全に分解され、モラクセラ菌が作り出す悪臭も取り除くことができる。油分が炭酸塩と反応して生成される成分こそが石鹸であり、この自ら生成された洗浄成分が、体から出たワックスやタンパク質汚れも効果的に除去してくれる。
クエン酸と炭酸塩を交互に使用して清掃すれば、臭いの元凶である排水口の管理も同時に行える。これらが汚染物質を効率よく洗い流してくれるからだ。刺激臭が強く頭痛の原因にもなり得る「塩素系漂白剤」を、必ずしも多用する必要はない。排水口に過炭酸ナトリウムや炭酸塩を少量注いでおくことで、臭いの発生をより確実に抑制できる。また、洗濯に使用する酵素入り洗剤を数滴落とすことも効果的だ。
■予防策としての「過炭酸ナトリウム」と「乾燥」
清掃後のトイレに再び黒カビやピンク汚れが発生しないようにするには、過炭酸ナトリウムを少量振りかけておくとよい。過炭酸ナトリウムから発生する過酸化水素が、カビや細菌の生存を困難にするためだ。また、カビや細菌は乾燥した環境に弱いため、掃除後はドアや窓を開けて換気を徹底し、湿気をこもらせないことが極めて重要だ。
「酢やクエン酸での拭き洗い」→「セスキ炭酸ソーダ水での拭き取り」→「過炭酸ナトリウムの散布と乾燥」→「排水口への洗剤投入」。この順序と方法で清掃を習慣化すれば、黒ずみや赤らんだ汚れに悩まされることはなくなるだろう。この手法は、トイレの鏡や便器内部の清掃にも同様に応用できる。













コメント0