
米紙ワシントン・ポスト(WP)が、記者の約4割にあたる規模の人員削減に踏み切った。生成AIの普及による収益悪化を表向きの理由に挙げる一方、専門家の間では、オーナーでアマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏が紙面の論調を「トランプ大統領に好意的」な方向へ寄せるなど、新聞を自らの別事業のために手段化してきたことが危機の根本原因だとの見方が出ている。
米メディアによると、WPは4日(現地時間)、経営・事業部門の人員とともに、ニュースルームの記者800人のうち300人以上を解雇した。マット・マレー編集局長は社内に対し、長期にわたり大きな損失が続いたことに加え、読者の需要に十分応えられていないと説明したという。生成AIの登場以降、オンライン検索からの流入が過去3年でほぼ半減し、記事の発行量も過去5年で大きく減ったとも伝えた。
削減の中心はスポーツ、地域、国際報道部門とされる。スポーツ面やブック(書評)面は事実上廃止される見通しだ。中東、インド、オーストラリア拠点の記者・編集者が対象となり、戦地取材に携わっていたウクライナ特派員や専属写真記者も解雇されたと報じられている。冬季五輪取材でイタリアに派遣されていたスポーツ記者は、解雇後も記事を送る意向を示したという。
WPは2024年に1億ドル(約155億円)の損失を計上した。界環境の悪化を見誤って事業を拡大し、2023年以降は累積赤字が続いている。ただ、赤字そのものがリストラの主因ではないとの指摘も根強い。
NYTのピーター・ベイカー記者はXへの投稿で、ベゾス氏がWPを買収して以降の純資産の増加が2,242億ドル(約34兆8,000億円)に上るとし、ベゾス氏の1週間の稼ぎでWPの損失を5年分まかなえる趣旨の見方を示した。

こうした指摘の背景には、ベゾス氏が自社の利益のためにWPを利用しているという批判がある。象徴的とされるのが、従来の進歩的な価値観を後退させ、トランプ大統領に配慮した姿勢が目立つ点だ。前回の大統領選では、36年ぶりに特定候補への支持表明を見送る方針を打ち出した。社内の編集委員会では当時、カマラ・ハリス氏への支持社説案が作られたものの、ベゾス氏が拒否したと伝えられている。編集部幹部が辞意を示し、その後数日で購読者が数十万人規模で離れたとも報じられた。
ベゾス氏は昨年2月、個人の自由と自由市場という二つの原則を支持し擁護するコラムを毎日掲載する方針を示し、これを意見面の指針に位置付けた。NYTは当時、こうした決定が紙面の右傾化を意味すると報じている。先月、米国がベネズエラを空爆した際、WPが「疑いの余地のない戦術的成功」とする社説を載せたこともあったという。
また、ベゾス氏はトランプ大統領の就任式準備基金に100万ドル(約1億5,500万円)を寄付した。アマゾンの配信サービス「プライム・ビデオ」では、トランプ大統領とメラニア夫人の人生に焦点を当てた作品を制作するなど、政権に友好的な姿勢を維持しているとの指摘もある。宇宙企業ブルー・オリジンの事業継続には政権側の協力が欠かせず、ベゾス氏としては関係を悪化させにくいという見立てもある。
WP出身のアシュリー・パーカー記者は『ジ・アトランティック』への寄稿で、財政難の処方箋や成功するビジネスモデルは提示できないと断りつつも、WPが何であり、何を価値としてきたかの理解を欠いたまま、同紙を不良資産や交渉カードのように扱えば、失うものは大きいと警鐘を鳴らした。交渉相手が、相手をまったく尊重しない大統領であるなら、なおさらだとの趣旨も示している。













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