アメリカ・ミシシッピ大学の研究成果
ナマコが生成する化合物
がん転移酵素の機能を抑制

「海の人参」と呼ばれるナマコががん細胞の転移を防ぐのに活用できるという研究結果が発表された。ナマコが生成する特異な化合物が、がん細胞の転移を抑える効果を持つことがわかった。
アメリカのミシシッピ大学・薬理学科のジョシュア・シャープ教授の研究チームは今月10日(現地時間)、この研究結果を国際学術誌『Glycobiology』に発表した。
ヒト細胞を含むほとんどの哺乳類の細胞は「グリカン」と呼ばれる小さな毛状の構造で覆われている。この構造を通じて細胞は細胞間コミュニケーションを行い、免疫反応を引き起こし、病原体などの危険因子も認識する。
がん細胞は「Sulf-2」と呼ばれる酵素を活性化させ、グリカン構造を変化させる。この変形によってがん細胞の転移が促進される。これは「剪定」に例えられる。0
研究チームは「我々の体の細胞は本質的にグリカンという森で覆われている」とし、「酵素がこの森の機能を変化させる。森の葉を剪定するようなものだ」と説明した。
研究チームはこの点に着目した。酵素を抑制することでがんの転移を防げると考えたのだ。研究チームはSulf-2酵素を抑制する物質を探すためにナマコを調査した。ナマコは陸上の動物では見られない、非常に珍しい構造の化合物を生成するためだ
研究チームはコンピューターモデリングと実験室テストを通じて、ナマコが持つ「フコシル化コンドロイチン硫酸塩」という化合物がSulf-2酵素を抑制できることを確認した。研究チームは「実験で得られた結果とシミュレーションで予測した結果を比較したが、その結果は一致した」と述べた。
ナマコから発見された化合物は他のSulf-2調整薬と異なり、血液凝固を妨げない利点もある。研究チームは「今後の臨床応用に向け、この化合物を人工的に合成する方法の確立が求められる。」とし、「海洋由来のがん治療薬の開発につなげたい」と表明した。