
中国が6日、原子力潜水艦から潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を初めて発射した中、今後は潜水艦からのミサイル発射が常時化する可能性があるとの見方が広がっている。特に、米本土への到達能力を持つミサイルを南太平洋に向けて発射したことから、台湾問題を巡って米国を牽制する狙いがあるとの分析も出ている。5月に北京で会談したドナルド・トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は9月にワシントンで再び首脳会談を行う予定となっている。
7日、メディアや専門家は今回の中国のSLBM発射について、米国への不満や圧力を示す政治的なメッセージの意味合いが強いとの見方を示した。笹川平和財団戦略・抑止グループ長の山本勝也氏は朝日新聞に対し「軍事的には潜水艦乗組員がミサイルを正常に発射できるか、またミサイルの性能が想定どおりかを確認する目的がある」とした上で「政治的には、現在の米中関係に満足していないというメッセージを米国に伝える狙いがある」と指摘した。
さらに山本氏は「太平洋に向けて発射したことや、SLBMが本来米国を標的とする兵器であることを考えれば、その意味は明らかだ」と述べ「米中首脳会談後も台湾問題を巡る認識を改めないトランプ大統領への不満を示した可能性がある」と分析した。
日本経済新聞(日経)も「陸上と海上の双方から米本土を攻撃できる能力を国際社会に示すことで、米国による台湾有事への軍事介入を抑止する狙いがある」と報じた。中国共産党系メディアの環球時報も今回のミサイル発射について、中国の台湾統一への強い意思を改めて示すものだと論評し「中国が完全統一を実現する意思を過小評価してはならない」と主張した。
また、環球時報は軍事専門家の分析として、今回発射されたミサイルは中国軍が昨年9月に初公開した新型SLBM巨浪-3(JL-3)の可能性が高いと伝えた。JL-3の射程は1万キロ以上とされ、南シナ海などから発射しても米本土の大半を射程に収めることができると知られている。
5月、トランプ大統領は習主席に「台湾独立を支持しない」と表明した一方、中国側が求めた台湾向け武器売却の撤回については明確な回答を避けた。米国は台湾への武器売却を米中貿易交渉のカードとして活用する構えを見せており、習主席の訪米前に武器売却が実現すれば、中国側にとって大きな打撃となる可能性がある。今回のミサイル発射には、米国の台湾有事への軍事介入を牽制するとともに、米国と対等な立場で交渉したいという中国側の意図が込められているとの見方が出ている。
中国政府は今回のミサイル発射について「計画された実験」と説明した。一方で、今後は潜水艦からのミサイル発射を恒常的に実施する方針を示したものとの見方もある。山本氏は「今後、太平洋に向けた潜水艦発射を常時的に実施するというメッセージの可能性がある」と指摘した。
また、東京大学の川島真教授は日経に対して「今回のミサイルは公海に向けて発射されたが、将来的には日本の排他的経済水域(EEZ)に落下する可能性もある」と警鐘を鳴らした。
中国は2024年9月にも大陸間弾道ミサイル(ICBM)を太平洋に向けて発射し、周辺国を驚かせた。太平洋へのICBM発射は1980年の東風-5以来44年ぶりだった。当時は地上から発射されたが今回は潜水艦から発射された。陸上発射ミサイルは衛星などで発射地点を比較的把握しやすい一方、潜水艦から発射されるミサイルは発射地点の特定が極めて難しい。このため、今回の発射は日本、米国、フィリピンなどに対する中国の軍事的脅威が一段と高まったことを示すとの分析も出ている。
木原稔官房長官は「日本の領空や排他的経済水域(EEZ)の上空を通過した事実は確認されていない」と述べた。中国は発射地点を公表していないが、日本政府関係者の話では、海南島東方の海域から南太平洋に向けて発射された可能性が高いという。
これに先立ち、日本の海上保安庁は5日、中国当局から「宇宙ゴミ」の落下を理由に航行警報区域を設定するとの通報を受けていた。設定区域には日本のEEZも含まれており、日本政府はこの区域がミサイルブースター(推進装置)の落下想定区域だった可能性があるとみている。実際、ミサイルは日本から大きく離れた南太平洋に落下したとみられる。政府関係者は「日本に近い場所で発射した場合、九州上空を通過することになり、日本との摩擦を避ける目的で今回の飛行経路を選択した可能性がある」と話している。














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