
ドナルド・トランプ米大統領は北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で再びスペインに対し「貿易を停止する」と圧力をかけたが、スペインは米国の要求を拒否する従来の姿勢を崩していない。トランプ大統領はスペインを「ひどい同盟国」と批判したものの、スペインは対イラン軍事作戦への協力やNATO加盟国の国防費増額要求に反対する立場を維持している。一方で、現時点でスペインに対する米国の具体的な報復措置は限定的にとどまっている。
8日にトルコ・アンカラで開かれたNATO首脳会議でトランプ大統領は、スペインが加盟国に求める国防費の国内総生産(GDP)比5%への引き上げを受け入れなかったため、スペインを「ひどい同盟国だ」と非難した。続けて「財務長官に対し、スペインとのすべての貿易を直ちに停止するよう指示した」と述べた。
これに対し、スペインのペドロ・サンチェス首相は譲歩しなかった。サンチェス首相は首脳会議後「スペインは信頼できるNATO加盟国だ」と述べ、米国との貿易関係についても「非常に強固だ」と強調した。スペイン政府は国防費はすでに大幅に増額しており、GDP比2.1%でもNATOが求める軍事能力を満たせるとの立場を維持している。5%という目標については社会保障財政に大きな負担を与える非現実的な要求だとしている。
スペインは第2次トランプ政権発足後、米国の主要な要求に最も公然と反対している同盟国の一つとされる。米国による対イラン軍事作戦にも協力しなかった。今年3月、米国がイランへの軍事行動を拡大した際、スペインは南部のロタ海軍基地とモロン空軍基地について、米軍による攻撃作戦への使用を認めなかった。その後も、対イラン軍事作戦に関連する航空機によるスペイン領空の利用を制限した。スペイン政府は自国の領土や領空がイラン攻撃に利用されることは両国間協定や国際法の範囲を逸脱するとの立場を示した。
トランプ大統領は当時もスペインへの不満をあらわにしていた。ロタ基地とモロン基地の使用を巡り「我々が望めば基地は使える」「飛んで行って使うこともできる。誰にも止めることはできない」と述べ、スペインとの貿易停止の可能性にも言及した。しかし、スペインは立場を変えず、サンチェス政権は米国の対イラン軍事行動を危険視し関与しない方針を維持した。
ただし、トランプ大統領の強硬な発言とは対照的に、スペインに対する実際の報復措置は限定的だ。米国はスペイン製品の全面禁輸には踏み切っておらず、ワインやオリーブオイルなど一部製品が制裁対象候補として取り沙汰されたものの、高関税の導入や輸入禁止措置は確認されていない。米政府がスペイン製品への制裁を検討しているとの報道はあるが、両国の貿易は継続しており、米企業によるスペインへの投資が停止した兆候もみられない。また、スペイン国内の米軍基地からの撤収や両国の軍事協定見直しも発表されていない。
むしろ、NATO首脳会議の終盤にはトランプ大統領の発言は和らいだ。スペイン側が国防費の増額やNATOへの貢献について説明した後、トランプ大統領は「今日のスペインは非常に寛大だった。大きな結束があった」とも語った。スペインは国防費5%目標を受け入れなかったものの、トランプ大統領は公然と圧力をかけた後、発言のトーンを和らげた。
スペインがこうした姿勢を維持できる背景には、欧州連合(EU)加盟国であることが大きいとの見方がある。通商政策は加盟国単独ではなくEU全体で扱われるため、米国がスペインだけを制裁すれば、EU全体との貿易摩擦に発展しかねない。また、スペイン国内のロタ海軍基地とモロン空軍基地の戦略的価値やサンチェス首相の国内政治基盤も、米国からの圧力を受け止める要因とされる。交渉の枠組みや国内政治の状況によっては、トランプ政権の圧力に各国が異なる形で対応できることを示す事例だとの評価も出ている。













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