王毅外相「国際警察を気取るべきではない」と米国を批判
米国の国際法軽視を材料に 台湾問題でも活用する可能性

米国によるベネズエラへの軍事攻撃は、中南米で影響力を拡大する中国を牽制する狙いもあると受け止められている。中国は今回の事態を、米国と対照的な「国際秩序の守護者」というイメージを強める機会と位置付け、対米の戦略競争に活用する構えだ。9日には、BRICSとして初の合同軍事訓練も実施される。
中国は、米国のベネズエラ攻撃やニコラス・マドゥロ大統領の排除をめぐり、批判を続けてきた。中国外務省によると、王毅外相(中国共産党中央外事工作委員会弁公室主任兼務)は4日、北京で行われたイスハク・ダール・パキスタン副首相兼外相との戦略対話で、ベネズエラ情勢の不安定化が国際社会の注目を集めているとしたうえで、「いかなる国も国際警察を名乗る資格はなく、国際法の裁定者を自任できるとも認めない」と述べた。
王毅外相は、他国への武力介入や威圧に反対する立場を強調し、パキスタンを含む国際社会とともに国連憲章を断固として守る考えも示した。中国外務省が前日にマドゥロ大統領の釈放を求めたのに続き、外交トップ自らが米国を名指しで非難した形となった。
一方で、今回の事態を受け、中南米諸国の対中外交が短期的に萎縮するとの見方も出ている。復旦大学のジャオ・ミンハオ教授は香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)に対し、米中が第三国、とりわけトランプ大統領が重視する西半球で競争を強めれば、競争はより直接的になり、情勢は一段と複雑化する可能性があると指摘した。そのうえで、米国の圧力に直面した中小国が中国との関係管理で、より慎重な対応を取る可能性があるとの見通しを示した。
SCMPによると、右派政権が新たに発足したボリビアは2025年11月、中国とのリチウム協力を再検討する方針を決めたとされる。アルゼンチンも、中国が支援してきた宇宙・通信分野の協力を中断することで合意した後、400億ドル(約6兆2,600億円)規模の支援を確保したという。
中国は短期の揺り戻しを織り込みつつ、長期目線で「米国とは異なる国際秩序の守護者」という立ち位置を前面に押し出し、巻き返しを図るとみられる。米シンクタンク「ジャーマン・マーシャル基金」のボニー・グレイザー氏(アジア担当)は、中国が「軍事力を用いず、他国の内政にも干渉しない国際法遵守国家」としての自己像を強調しているとしたうえで、今回の機会に米国の無謀さと中国の振る舞いを対比させようとするだろうと分析した。
ただ、中国の軍事的活動はこれまで、台湾海峡や南シナ海、黄海など周辺海域に集中しており、実力行使に至らないグレーゾーン戦術を用いるケースが多い。中国側は、台湾海峡や南シナ海の領有権争いに関わる軍事活動について、対外介入ではなく主権の防衛だという立場を取っている。
米ブルッキングス研究所中国センターのライアン・ハス所長は、Xに投稿した論評で、中国はベネズエラ情勢をめぐる感情的な反応を抑えつつ米国を規탄し、国際法を守る姿勢を演出しようとするだろうと指摘した。その一方で、水面下では南シナ海など太平洋地域において、米国と同様に自国への「国際法の例外扱い」を求める可能性があるとも分析した。さらに、多くの国が米国は国際法を守っていないと見ているとの認識を踏まえ、中国がこうした構図を将来の台湾戦略にも利用し得ると述べた。
中国は9~16日、南アフリカ共和国周辺海域で実施されるBRICS初の合同軍事訓練に参加する。シンガポール紙・聯合早報は、「平和への意志2026」と名付けられたこの訓練がトランプ大統領を刺激した可能性があると伝えた。海賊対処などを念頭に置いた比較的小規模な内容とされるが、経済協力が中心だったBRICSが初めて軍事訓練を行う点で象徴性は大きい。南アフリカのメディアによると、訓練にはロシアとイランが参加し、南アフリカ国内でも均衡外交を損なうとの議論が起きているという。
南洋理工大学S・ラジャラトナム国際大学院(RSIS)のシュー・ルイリン上級研究員は、今回の訓練は中国がグローバル・サウスのリーダーとしての立場を固める狙いがあるとし、西太平洋にとどまらず戦略的役割を広げる意思を示す意味合いも含まれると指摘した。














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