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トランプの侮辱外交に…”80年続いた血盟”ファイブ・アイズに亀裂走る

竹内智子 アクセス  

引用:depositphotos
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米国、英国、カナダ、豪州、ニュージーランドの英語圏5か国による安全保障上の情報同盟「ファイブ・アイズ(Five Eyes)」が、重大な局面を迎えている。戦後、自由陣営の「目と耳」として機能してきた枠組みだが、ドナルド・トランプ米大統領の孤立主義的かつ攻勢的な対外政策を背景に、英国とカナダの首脳が公然と異議を唱え、内部の緊張が表面化しているためだ。米英の秘密情報共有の基盤となる協定が締結されて80周年の節目にあたる年に、血盟関係の揺らぎが取り沙汰される状況となった。

ファイブ・アイズの創設メンバーで中核を担ってきた米英関係は、今年に入って対立が制御しにくい水準まで深まっている。トランプ大統領は22日、米FOXニュースのインタビューで、アフガニスタン戦争(2001~2021年)で共に戦った北大西洋条約機構(NATO)諸国に触れ、「我々は彼らを必要としたことはない。彼らは前線から少し離れていた」と述べた。

この発言は、アフガニスタンで米国に次いで多い457人の戦死者を出した英国の反発を招いた。キア・スターマー英首相は直ちに「侮辱的で、ひどい」と反発し、ヘリコプター操縦士として同地に派遣された経験を持つヘンリー王子も「犠牲については敬意をもって語るべきだ」と批判した。波紋が広がる中、トランプ大統領は24日、自身のSNSで「英国軍を愛している。彼らは偉大だった」と火消しを図ったが、反発の広がりを止めるには至らなかった。

英国はすでに、トランプ政権2期目との心理的・実質的な距離を取る姿勢を強めていた。最近も、米国によるカリブ海での麻薬対策軍事作戦について「国際法違反の恐れがある」と判断し、関連する機密情報の共有を停止する強硬策に踏み切った。そこへ、同盟を嘲笑するかのようなトランプ大統領の発言が重なり、対立をさらにあおる形になった。

もう一つの加盟国で、米国と国境を接するカナダも、米国との関係が決定的に悪化しつつある。13~17日にマーク・カーニー加首相が中国を訪れ、習近平国家主席の厚遇を受けながら幅広い経済協力の拡大方針を示すと、トランプ大統領はカナダに対する敵対的措置を相次いで打ち出した。トランプ大統領は24日、自身のSNSでカーニー首相を米国の「知事」と呼び、「カーニー知事がカナダを中国の対米輸出の積み替え港にするなら、すべての製品に直ちに100%の関税を課す」と警告した。カナダを「米国の51番目の州」とみなすかのような、特有の侮蔑的表現を繰り返した格好だ。

さらにトランプ大統領は、イスラエル・ハマス戦争の停戦後、和平の定着と復興を目的に発足させた「平和委員会」へのカナダの招待を撤回するとも述べた。カナダ側も、もはや米国を同盟国・隣国として当然視しない姿勢をにじませている。カーニー首相は21日、スイスで開かれた世界経済フォーラム(ダボス会議)の演説でトランプ大統領を念頭に、「カナダは米国のおかげで成り立っているのではない。カナダ人であるから繁栄している」と語った。国際情勢を「亀裂(Rupture)」と位置づけたうえで、「過去への郷愁は戦略になりえない」とし、「中堅国は結束しなければならない。我々が食卓に着かなければ、メニューにされる」とも述べた。トランプ時代の米国主導の秩序に固執せず、反トランプの連帯が必要だと訴えた、との見方が出ている。

「米英」、「米加」の対立が同時に進んだことで、ファイブ・アイズは結成以来最大級の危機に直面している。過去にも加盟国間の意見対立が表に出た例はあったが、現在のように摩擦が連鎖的に可視化する状況は異例とされる。ファイブ・アイズは、多数ある安全保障枠組みの中でも、次元の異なる「血盟」に近い同盟として受け止められてきた。

第二次世界大戦で共に戦った英国と米国は、戦後も中核的な情報共有の必要性を痛感し、1946年に「秘密情報交換協定」を締結した。英連邦に属していたカナダ、豪州、ニュージーランドが順次加わり、協力体制が形成されていった。民族(アングロサクソン系)、言語(英語)、宗教(キリスト教)、政治体制(民主主義)における同質性が強い5か国の結び付きは、他の同盟体とは性格を異にしていた。

冷戦期には、共産圏の動向を監視する国際的な情報監視網「エシュロン」を共同で構築・運用したことが代表例とされる。米政界では一時、中国への対抗を目的に日本や韓国などを加えた拡大案が繰り返し取り沙汰されたが、結局は具体化しなかった。そうした強固な枠組みが、トランプ大統領の再登板から1年も経たないうちに根底から揺らいでいる、というわけだ。

トランプ大統領が引き起こしたNATO内部の対立が、防衛費負担という「費用」を巡る問題だったのに対し、ファイブ・アイズの危機は、血を分けた同盟国同士の「信頼」が崩れつつある点に本質があるとの指摘もある。最優先の同盟国でさえ、トランプ大統領の「取引主義」と「侮辱外交」に耐えきれず、各国が自国優先の対応へ傾き始めているという見立てだ。

☞ファイブ・アイズ(Five Eyes)

米国、英国、カナダ、豪州、ニュージーランドの5か国が参加する英語圏の情報同盟である。1946年、米英がソ連など共産圏への対応を念頭に秘密情報交換協定を結んだのが起点で、その後ほかの国が加わり、1956年に5か国体制が確立したとされる。加盟国は米国の最優先同盟として扱われ、「エシュロン」と呼ばれる大規模な通信傍受システムなどを通じて世界各地で収集した機密情報を共有してきた。

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