
イランの新たな最高指導者にモジタバ・ハメネイ師が選出されるまでには、軍部と穏健派の政治勢力の間で激しい権力闘争があったと伝えられている。
16日(現地時間)、米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は、モジタバ師が最高指導者に就任するまでの過程について、「イラン版『ゲーム・オブ・スローンズ』に例えられるほどだった」と報じた。表向きは予定された権力継承のように見えていたが、2月28日に米国とイスラエルによる空爆で、イランの第2代最高指導者だったアリ・ハメネイ師が死亡した後、権力中枢ではおよそ1週間にわたり激しい後継争いが繰り広げられたという。
NYTは、ハメネイ師が仮に急死でなかった場合、モジタバ師が後継者となる可能性は低かったと伝えた。ハメネイ師は生前、側近に後継候補として3人の名前を挙げていたが、この中に次男のモジタバ師は含まれていなかったとされる。
ハメネイ師が空爆で死亡し、権力の空白が生じると、イラン国内では強硬派と穏健派の対立が深まった。強硬派は従来路線の維持・強化を主張する一方、穏健派は新たな指導者の下で統治の見直しや米国との敵対関係の解消を求めた。
モジタバ師は、イスラム革命防衛隊(IRGC)から強い支持を受けていた。特に、同組織で司令官を務めたアフマディ・ヴァヒーディー氏やアリ・アジズ・ジャファリ氏、モハンマド・バーゲル・ガーリーバーフ氏らが支持に回った。また、IRGCの情報部門トップを務めたホセイン・タエブ氏も、モジタバ師の側に立ったとされる。
一方、イランの最高指導者顧問のアリ・ラリジャニ氏やマスウード・ペゼシュキアン大統領、一部の高位聖職者は、モジタバ師が国家分裂を引き起こす可能性があるとして反対した。彼らはハサン・ロウハーニー前大統領とイラン革命を主導したアヤトラ・ホメイニ師の孫ハッサン師を推した。宗教学者アリレザ・アラフィ氏も代替候補として提案された。
しかし、戦闘が続く中で国内の空気は次第に強硬路線へと傾いた。イランの高官はNYTに対し、聖職者らが国家危機の収拾を担う指導者よりも、「殉教」した指導者に代わって「復讐」を掲げる人物を求める傾向があったと語った。
最高指導者の選出権限を持つ専門家会議は、3月3日、オンラインで実施した初回投票で3分の2以上の賛成を得てモジタバ師を選出した。同会議は結果を政府に通知し、政府は国営メディアに対し、4日未明の礼拝の時間に合わせて発表するよう指示した。
ラリジャニ氏は、米国とイスラエルによる「後継者排除」の脅威を考慮し、発表の保留を求めた。さらに穏健派も動き始めた。特にラリジャニ氏は、オンラインでの投票は憲法に違反するとの見方を示した。
一方で、療養中のモジタバ師が最高指導者の地位を望んでいないとの見方も伝えられた。穏健派は、ハメネイ師が生前、息子や家族を後継者にしない意向を示していたとする証言を提示し、世襲は1979年の革命の理念に反すると主張した。
こうした動きに聖職者層は動揺し、IRGCも直ちに反発した。
とりわけ、ペゼシュキヤーン大統領が3月7日、周辺のアラブ諸国への攻撃について謝罪し、停止する方針を示すと、IRGCは強く反発した。将官らは専門家会議に対し、速やかな最終投票と結果の公表を求めた。さらに、タエブ氏は専門家会議を構成する聖職者88人全員に電話で連絡を取り、モジタバ師への支持を働きかけた。最高指導者の子息に投票することは、道徳的・宗教的・イデオロギー的な義務だと訴えたという。
3月8日に再招集された専門家会議では、ハメネイ師の遺志を尊重すべきだとする意見と、憲法上その義務はなく聖職者が独自に決定する権限を持つとする意見が対立した。一方で、戦時下でのオンライン投票を有効と認める点では一致した。採決の結果、モジタバ師は88票中59票を獲得した。
その後、国営メディアは新たな最高指導者の就任を発表した。これに対し、これまで反対していた勢力からも祝意と忠誠を示す動きが相次いだと、NYTは伝えている。
















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