
トランプ政権による兵力再配置と関税圧力を受け、米国の安全保障公約に対する不安が高まっている。中国もまた、貿易・安全保障分野での影響力を前面に押し出し、周辺国への圧力を強めている。イラン戦争でエネルギー供給網まで揺らぐ中、ポーランドは韓国製戦車の生産ライン誘致を進め、オーストラリアは日本製艦艇の購入を決定するなど、中堅国が「自力防衛」に動き始めている。
米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は10日(現地時間)、イラン戦争による世界的なエネルギー供給不安に加え、米国のドナルド・トランプ大統領と中国の習近平国家主席の首脳会談が近づく中、中堅国が自国防衛のため新たな取引に乗り出していると報じた。
ここ数週間では、ポーランドが韓国製K2戦車の生産ライン誘致を決定し、オーストラリアも日本製軍艦の導入を進める方針を固めた。さらに、カナダはインドへウランを供給し、インドはベトナムへの巡航ミサイル輸出を進め、ブラジルもアラブ首長国連邦(UAE)向け軍用輸送機の製造に乗り出すなど、安全保障を巡る各国の連携が広がっている。
こうした動きの背景には、米国と中国に対する不信感の高まりがある。トランプ大統領と習主席は、貿易や安全保障分野で圧倒的な影響力を行使し、他国への圧力や制裁を繰り返してきた。比較的小規模な国々は、二大国の神経を逆なでしないよう慎重に立ち回る一方、互いに連携することでリスク軽減を図っている。
オックスフォード大学のフィリピン人政治学者リチャード・ヘイダリアン氏は、こうした動きを「あらゆる形のヘッジ戦略」と表現した。シンガポールの安全保障アナリスト、チョン・ジャイアン氏も「もはや北京だけでなく、ワシントンとも正面衝突したい国はない」と指摘している。
特にアジアでは不安感が強まっている。イラン戦争による原油供給不足に加え、中国が石油製品の輸出規制を強化していることで、アジア諸国が最も早く、かつ深刻な打撃を受けているためだ。各国政府関係者や首脳らの発言を総合すると、多くの中堅国が悪化する国際秩序の中で「押しつぶされつつある」と感じていると、同紙は伝えた。
今週北京で予定されているトランプ大統領と習主席の首脳会談も、期待より不安を高めているとの見方が強い。多くの国は、この会談が状況改善につながるよりも、むしろ混乱を深める可能性の方が大きいとみており、複雑な問題を戦略より直感的な判断で進めるトランプ大統領の外交スタイルが、最大の不安要因として挙げられている。

アジア各国の政府関係者は、トランプ大統領が習主席との取引に過度に前のめりになることを懸念している。台湾への武器売却を停止したり、中国が民主主義体制の台湾に圧力をかけやすい方向へ、米国の対台湾政策の表現を軟化させたりする可能性があるとの見方だ。台湾当局者の一人は、米国による台湾支援縮小の可能性について「最悪の悪夢になり得る」と語った。
台湾への譲歩は、他の米国の同盟・友好国にも「米国は自分たちを見捨てるかもしれない」という不安を広げる可能性がある。そうなれば、中国はインドとの国境問題や南シナ海など、ほかの係争地域でも一段と強硬な圧力をかける余地を得ることになる。ベトナム政府関係者も、トランプ大統領が大幅な譲歩を行わなかったとしても、習主席に融和的な姿勢を示したり称賛したりするだけで、中国が小国への圧力をさらに強める口実になり得るとみている。
実際、トランプ大統領はイラン戦争対応のため、太平洋に展開していた空母打撃群や、韓国に配備されていた一部弾薬を中東方面へ転用したことがある。また、ドイツ首相への不満を示した後、米国防総省が在独米軍のうち少なくとも5,000人を撤収すると発表したことで、アジアの同盟国は集団抑止力がいかに急速に弱体化し得るかを改めて痛感した。トランプ大統領は過去にも、日本や韓国から米軍を撤収する可能性に言及し、同盟国を揺さぶったことがある。
中国が反発している「AUKUS(オーカス)」のような安全保障構想にも、揺らぎが生じる可能性があるとの見方が出ている。AUKUSは、米国・英国・オーストラリアが、中国の影響力拡大に対抗するため、オーストラリアに原子力潜水艦や先端技術を提供する安全保障協力の枠組みだ。オーストラリア情報機関出身で、オーストラリア国立大学のヒュー・ホワイト教授は、「米国の同盟国が、もはや米国だけを頼りにはできず、互いに目を向けなければならないという認識は、極めて現実的なものになっている」と語った。
各国は米国依存からの脱却を模索する一方、中国を過度に刺激しないよう慎重な姿勢も崩していない。ベトナム政府関係者は、高市早苗首相に対し、ハノイでの演説で中国を直接批判しないよう求めたこともあった。それでも日本とベトナムは、衛星データ共有やベトナム最大級の製油所における供給安定化支援など、6件の協力協定に署名した。プリンストン大学の国際政治学者ロバート・コヘイン教授は、「米国が以前より不安定な存在となった以上、各国が代替策を模索するのは自然な流れだ」とした上で、「不完全な代替案であっても、全く代替がないよりはましだ」と指摘した。
















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