
メタが日本でAI(人工知能)グラスの販売を開始し、日常生活での盗撮や個人情報の侵害への懸念が高まっている。
日本経済新聞が30日に伝えたところによると、メタがAIグラス「レイバン・メタ」を日本で発売し、一般の眼鏡と似たデザインであるため、盗撮などへの悪用の可能性が指摘されているという。
レイバン・メタは、メタがフランスの眼鏡メーカーであるエシロールルックスオティカと共同で販売する製品だ。フレームの部分にカメラとスピーカーが内蔵されており、利用者は音声でAIに指示して写真を撮ったり、目の前にあるものを検索したり、翻訳したりすることができる。
外見は普通の眼鏡とほとんど変わらないが、着用している人の視界に入った場面を撮影できるという点が、不安を高めている。スマートフォンで撮影するときよりも、周囲の人が撮影に気付きにくく、その分、盗撮に悪用される可能性も高まる。
会議室でAIグラスを着用している人が、視界に入った文書や画面を撮影すれば、社内の機密の情報が外部に漏えいする恐れもある。機密の資料が行き交う業務の空間では、情報の漏えいの問題がさらに深刻化する可能性がある。
AIグラスがイヤホンや、レンズ内のディスプレーと組み合わされると、悪用の範囲はさらに広がる。利用者が目の前の問題や状況をAIに見せて、説明や助言を受けることができるためだ。試験での不正行為はもちろん、将棋やチェスなどのボードゲームで、ひそかに戦略を受け取るといった不適切な使い方も可能になる。
メタはプライバシーの侵害を防ぐため、撮影中は眼鏡に付いている発光ダイオード(LED)が点灯するようにした。LEDを覆うと撮影が止まる仕組みも組み込んだ。
しかし、こうした安全装置が十分なのかは不透明だ。米国ではすでに、LEDを覆いながらカメラを作動させられるテープや、LEDが点灯しないように改造するサービスが登場しているという。技術的な対策と利用者の回避策が、繰り返される様相を呈している。
グーグルも今秋、眼鏡型のAI端末の発売を準備している。グーグルは過去に「グーグル・グラス」が、街中での撮影やプライバシーの侵害をめぐる論争で販売中止に追い込まれた経験を踏まえ、新しい製品は利用者や周囲の人のプライバシーに配慮しながら試験中だと明らかにした。
最大の懸念は顔認証の機能だ。現在のレイバン・メタには顔認証の機能は搭載されていないが、今後、AIグラスに顔認証の機能が加わると、街中で出会った人の身元がすぐに特定される可能性があるとの指摘が出ている。
特にSNSで顔写真や個人情報を公開している人は、リスクがさらに高まる可能性がある。AIグラスで撮影した顔を、外部の顔認証のシステムやオンラインの情報と照合すれば、名前や出身校、住所、電話番号、家族関係までもが判明する可能性があるためだ。
実際に、2024年に米国では、学生2人がAIグラスで撮影した映像と、外部の顔認証のシステムを組み合わせる実験を行った。過去にインターネット上で公開された情報を活用したところ、一部の人物の身元や生活の情報が明らかになったという。
人権団体、全米市民自由連合(ACLU)など、70を超える市民団体は、メタに対し、顔認証の機能の導入に警戒するよう呼びかけた。これらの団体は、顔認証は越えてはならない一線だと警告しており、メタも拙速な導入はしないとの方針だ。
専門家は、AIグラスの悪用の防止を、個別の企業の自主的な対策だけに任せるのは難しいとみている。神戸大学の寺田努教授は、撮影中だけでなく、AIの機能を使用しているときにも、周囲の人が分かる表示のシステムを、企業が共通して整備すべきだと指摘した。














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