
米国とイランは終戦に向けた了解覚書(MOU)締結後、スイスで初の後続交渉を行い、曲折を経ながらも一定の合意に達した。ただし、今後の交渉にはなお多くの課題が残されているとの見方が強い。
米国は核合意の実現を急ぐ一方、イランは経済制裁下で資金確保が急務となっている。双方はそれぞれ自国に有利な成果を強調しているものの、イランの核保有阻止を巡る重要な論点は依然として残されたままで、米国がイラン産原油への制裁を一時的に緩和したことで、イラン経済はひとまず一定の余裕が生まれた。
米国の交渉責任者を務めるJDバンス米副大統領は22日(現地時間)、記者団に対し、イランが国際原子力機関(IAEA)の査察団受け入れを認めたことについて「米国にとって重要な節目だ」と評価した。
バンス副大統領は「これはまさに米国が実現を目指し要求してきたことだ」と述べ「他の核交渉でも大きな前進があった」と強調した。
イランとのMOUでは、核協議を進めるため60日間の継続協議期間を設けている。しかし、米国内では「降伏に等しい」との批判が相次いでおり、バンス副大統領としては初回協議で核問題に一定の成果があったことを強調し、こうした批判を抑えたい狙いがあるとみられる。

一方、核査察の範囲や水準は依然として最大の難題だ。非核化にはイランが保有するウランや濃縮施設などの実態を透明性をもって公開することが不可欠であり、イランから制限のない大規模な査察を引き出せるかが焦点となる。
バンス副大統領も帰国途中、記者団に対し「(イランに)査察団を入れるのは大きな前進だが、実際に何をさせるかは見守る必要がある」と述べ、引き続き協議が必要との認識を示した。
ドナルド・トランプ米大統領もIAEA査察を今回の成果として強調する姿勢を示した。
トランプ大統領は同日、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で「イランは今後長期間にわたり『核の透明性』を確保するために主要な兵器査察を受け入れることに同意するだろう」と投稿した。
しかし、イラン側からは早くも異なる見解が示されている。
イラン外務省のエスマイル・バガイ報道官は「新たな約束はしていない」と反論した。イランは2015年の核合意で国際社会による査察を受け入れたものの、トランプ大統領が2018年に合意から離脱した後は査察を制限し、昨年6月の米国による核施設攻撃以降は停止していた。
IAEA査察団のイラン内活動はトランプ大統領による核合意離脱以降、大きく制約されてきた経緯がある。このため、今回のIAEA査察団受け入れは、実質的にはバラク・オバマ米政権時代の核合意に戻る内容だとの指摘も出ている。

米国とイランが今回の協議でホルムズ海峡やレバノン情勢を巡る危機管理体制の構築で合意した点も成果の一つと受け止められている。
イスラエルとレバノンの親イラン武装組織ヒズボラとの衝突によってMOUが揺らぐ事態を避けるため、緊張緩和に向けた調整機関を設置するほか、ホルムズ海峡を航行する商船の安全確保を目的に事故や誤算を防ぐための連絡体制を整備することで一致した。
MOU締結後初の高官級協議が決裂せず、一定の交渉の勢いを維持できた点は評価されている。
ただし、これは新たな進展というよりMOU締結時に積み残された課題を整理した側面が強いとの見方もある。
米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は「本来であれば、より困難な課題を協議すべき場だったが、双方は本来すでに解決されているはずの問題の処理に多くの時間を費やしたようだ」と指摘した。
米国がイランのIAEA査察受け入れを最大の成果と位置付ける一方、イランは凍結資産の解除や制裁緩和に関心を集中させている。
初回の高官級協議終了に合わせて、米国がイラン産原油への制裁を解除したことはイランにとって大きな成果と受け止められている。原油制裁の緩和により国際社会からの経済的圧力が和らぎ、イラン経済にも一定の余裕が生まれた。
60日間の原油制裁緩和には、イランが融和的な対応で応じることへの米国側の期待が込められているとの見方もある。
米国はイランに凍結資産が解除された場合、その資金で米国産農産物を購入するよう提案したと伝えられている。米国の農家を支援すると同時に、イラン国民の生活改善にもつながるというのがトランプ政権の論理だ。
一方で、解除された凍結資金が核開発やテロ組織、代理勢力への支援に流用されないよう、用途を限定できるかが米国にとって重要な課題となるが、イランがこれを受け入れるかは不透明だ。
IAEA査察を巡っても協議終了後に双方の説明が食い違っている状況であり、高濃縮ウランの処理やウラン濃縮停止期間といった、より重要で対立の大きい非核化問題で早期に妥協点を見いだせるか疑問視する声も上がっている。
NYTは「MOUで定められた60日間は双方の核心的な争点を解決するための期間であり、最も重要なのはイランの核開発問題だ」とし「初の交渉でこうした問題は中心的な議題とはならず、IAEA査察団の復帰も核問題の解決にはなお程遠い」と分析した。













コメント0