「午前に免疫チェックポイント阻害薬を投与すると生存率向上」とした中国研究チームの論文が撤回

肺がん患者が午前中に免疫チェックポイント阻害薬の投与を受けると、腫瘍の進行リスクが半減し、生存期間が約1年延びるとした論文が撤回された。
国際学術誌『サイエンス』は24日、『ネイチャー・メディシン』が2月に掲載した免疫チェックポイント阻害薬の投与時間に関する論文を撤回したと報じた。
中国・湖南省がん病院のヨンチャン・ジャン教授の研究チームは2月2日、『ネイチャー・メディシン』で、肺がん患者を対象とした免疫チェックポイント阻害薬の無作為化第3相臨床試験の結果を発表した。
しかし、この論文は公表直後から疑問視されていた。研究者らは、免疫チェックポイント阻害薬の投与時間を午後から午前へ変更しただけで、生存期間が約1年延びるという結果に強い疑問を抱いた。その効果は、化学療法単独と、化学療法に免疫チェックポイント阻害薬を追加した治療との差に匹敵するほど大きかったためだ。
米カリフォルニア大学サンフランシスコ校のアニル・マカム内科教授は、「投与時間を変えただけで、強力な薬剤を追加した場合と同等の効果が得られるのであれば、腫瘍診療の常識は一夜にして変わらなければならない」と指摘した。
さらに、中国人患者210人のうち、副作用によって臨床試験から途中離脱した患者が1人もいなかった点も議論を呼んだ。腫瘍学の臨床試験で離脱者が皆無というのは、統計学的に極めて異例だからだ。
また、試験の研究設計や評価指標が変更されていたことや、患者が研究計画書の通りに無作為に割り付けられていなかった可能性をうかがわせる証拠が見つかったことも確認された。
研究者らが論文の内容に対して相次いで疑問を投げかけたことを受け、『ネイチャー・メディシン』の編集部は、同論文のオンライン版に「注意喚起」の警告文を掲載した。その後、著者側から提出された追加資料を精査したうえで、最終的に論文の撤回を決定したという。
編集部は、研究者らが指摘した問題に加え、中国語版と英語版の研究計画書に不一致があったことや、不自然なデータパターンが見つかったことなどを撤回理由に挙げ、「研究結果の完全性をもはや信頼できない」と説明した。
論文の責任著者であるヨンチャン・ジャン教授は、『サイエンス』の取材に対し「内部での検証の結果、研究に複数の問題があったことが確認された」としたうえで、「不備があったことを認めるとともに、学術誌や読者の皆さまにご迷惑をおかけしたことを、お詫び申し上げる」と語った。ただし、具体的にどのような不備が、どのような経緯で生じたのかについては、説明しなかった。
今回の論文撤回は、研究結果が十分に検証され、再現性が確認されるまでは、主要学術誌に掲載された論文であっても、その内容だけを根拠に診療方針を変更するなど、臨床現場へ直ちに適用すべきではないことを示している。
今年3月には欧州肺がん学会が、3,000人以上の肺がん患者が参加した無作為化臨床試験8件を解析し、免疫チェックポイント阻害薬の投与時間は生存率に影響を及ぼさないとの結論を示した。また、米国臨床腫瘍学会の年次学術集会でも、午前中の治療と生存期間の延長との関連性は確認されなかったとする研究結果が報告されている。
















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