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【窓口があっても扉を叩けるか別問題】兄妹2人を失った父親の5年間の闘い…「長男が暴力団と関わっていた」根拠なき噂に苦しめられた市川さんの告白

織田昌大 アクセス  

引用:長野放送
引用:長野放送

長野県坂城町(さかきまち)の住宅で、兄妹が銃撃され死亡したという事件から5年が経った。遺族である父・市川武範さんは、今も癒えることのない深い悲しみの中で暮らしている。事件以降、彼は一貫して犯罪被害者支援の拡充を訴え続け、今もなお「道のりは遠い」と語っている。

5年前のあの日から、引き裂かれたカーテンや窓は今も当時そのままだ。市川さんは「家を離れるその日まで、このカーテン、この窓を記憶に留めておきたかった」と述べた。その窓から侵入した男は、事件当日の夜、長女・杏菜さん(当時22)と次男・直人さん(当時16)の命を奪った。犯行後、犯人は自ら命を絶ったとされている。

事件当時、警察は2日前に長男への暴行容疑で容疑者の逮捕状を請求し、長男には避難措置を講じていたが、家族全員を狙った犯行を防ぐことはできなかった。

「昨日は直人の21歳の誕生日でした。『今頃、どんな大人になっていただろう』と考えながら一日を過ごしました。杏菜はもう28歳になる年齢です。もしかすると家庭を築き、子どもを育てていたかもしれません。でも、そうした未来はもう私たち夫婦には訪れません」

2人の子どもを同時に失った衝撃に加え、市川さんを襲ったのは「長男が暴力団と関わっていた」、「父親がきちんと避難させなかったせいだ」といった根拠のない噂や誹謗中傷であった。彼は職を失い、自宅にも住めなくなったという。

「子ども2人を失っただけでも耐えがたいのに、その後に浴びせられた誹謗中傷まで…この5年間は本当に耐え難い日々でした」

市川さんは、自分と同じような苦しみを抱える人が少しでも減るようにという思いから、犯罪被害者支援の必要性を訴え続けている。そして、その取り組みは少しずつ実を結びつつある。2022年、長野県は、遺族・被害者に見舞金を支給する「犯罪被害者等支援条例」を制定した。2023年に起きた中野市での銃撃事件を機に、県内77市町村のうち73市町村が同様の条例を整備した。残る4市町村も、年内の制定を目指して準備を進めているとされている。

「被害者が安定した生活基盤を持つこと。それが心の回復には不可欠なんです。条例の制定によって支援が可能になったのは、大きな前進だと思います」

行政だけでなく、地域の市民社会も動き出している。昨年、千曲市(ちくま市)では市民による自主的な集まり「ともに会」が発足した。この会では、月に1回、犯罪被害者支援に関する事例を共有し、全国各地の取り組みについて学ぶという。5月17日の活動には、市川さんも参加した。

「窓口ができても、被害者が本当にその扉を叩けるのかどうかは別問題なんです」

「被害者側が自ら動かなければ何も始まらないという現実は、今もなお変わってないと感じます」

団体が設立されてから1年。活動を紹介しても「大変そうだから関わりたくない」という反応に直面することもあるという。しかし、だからこそ継続的な活動が重要だというのが、構成員たちの考えである。

「犯罪被害者や遺族が、どんな気持ちで日々を生きているのか、どのような現実に直面しているのか…日常の中ではなかなか分からないはずです。被害者の視点から社会を見る姿勢が必要だと思います」

「現実を伝えることが大切です。私たちが経験したことを語ることで『被害者の声は社会にとって必要なものだ』という認識が広がってほしいのです」

市川さんは今後も、当事者としての経験を基に、犯罪被害者支援の拡充を求めて声を上げ続けていくつもりだという。

「今もまだ見えにくい部分や、どうにかして変わってほしいと感じるところがたくさんあります。被害直後は、言葉にすることすらできないほど混乱し、自分を見失ったままの状態が長く続きます。想像力を働かせてでも、そうした状況に合った支援が整備されていくことを願っています」

一方、政府は2024年6月から犯罪被害者への給付金の支給額を引き上げた。また、被害者や遺族に対し、事件直後から弁護士が一貫して対応できる制度を盛り込んだ「改正・総合法律支援法」も、2026年までに施行する予定だとされている。

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