
米『CBS』の深夜トークショー『ザ・レイト・ショー・ウィズ・スティーヴン・コルベア』の司会者スティーヴン・コルベア氏が、ドナルド・トランプ米大統領への辛辣な批判を連日繰り返している。政権批判を続ける中で番組打ち切りが決まり、その発言はさらに鋭さを増した。
2015年から番組を率いてきたコルベア氏は、今月5日の放送で、米政府が雇用の悪化を発表した直後にトランプ大統領が労働統計局長を解任した件を皮肉り、「違う、バカ野郎!これで仕事が一つ減ったじゃないか。分からないのか? 自分で罠にハマったんだ」と痛烈に突き刺した。番組は今年第2四半期に同時間帯視聴率1位を記録していたが、CBSは先月17日、深夜番組市場の厳しい財政状況を理由に来年5月の終了を発表。番組自体を終える判断であり、内容や実績とは無関係だと説明した。
しかし、CBSや親会社パラマウントがトランプ大統領の意向をうかがったのではないかとの疑念もくすぶる。先月15日、CBSとトランプ大統領が約1,600万ドル(約23億5,700万円)の損害賠償訴訟で和解した件を、コルベア氏が「巨額の賄賂」と批判。その3日後、トランプ大統領はSNS「トゥルース・ソーシャル」に「コルベアが解雇されて嬉しい。彼の才能は視聴率よりも低い」と投稿した。

22日の放送でコルベア氏はこの投稿を紹介し、「よくもそんなことが言えたな、大統領。才能もない男にこんな風刺ができると思うか? ふざけるな」と言い放った。暴言部分はミュート処理されたが、観客は喝采で応えた。背景には、パラマウントが映画会社スカイダンスの買収承認を連邦通信委員会(FCC)に申請していた事情がある。FCCはトランプ大統領が任命した委員長が率いており、パラマウントにとって政権との摩擦は避けたい状況だった。
『ザ・レイト・ショー』打ち切り発表からわずか数日後、FCCは合併を承認。FCC民主党系のアンナ・ゴメス委員は声明で「報道機関の決定や編集判断に政府が前例のない介入を行っている。これは憲法修正第1条を侵害するものだ」と非難した。昨年にもトランプ大統領はCBSの『60ミニッツ』が民主党候補カマラ・ハリス氏に有利な編集を行ったとして訴訟を起こしており、今回の一連の動きは、メディアに圧力をかける意図があったのではないかとの見方が強まっている。
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