
中国は「東洋のハワイ」と呼ばれる海南省を、空母戦力の中核拠点として育成している。青島と大連を中心とする北部での空母運用には限界があるため、南部の海南省三亜基地でその弱点を補い、台湾有事の際には日米の増援戦力を南側から遮断する構想だ。中国は2012年に初の空母・遼寧艦を就役させた後、2019年に山東艦、2025年には福建艦を相次いで就役させ、3隻の空母体制に入った。
海南省、南部海域の出口に
香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)によると、中国の軍事専門誌ディフェンス・レビューは最近、「中国海軍の海南空母基地は艦隊の生存性に不可欠であり、戦時に米国が第1列島線に沿って実施し得る海上封鎖に対応するうえで、決定的な役割を果たし得る」と分析した。列島線は、冷戦期に米国の戦略家らがソ連と中国をけん制するために作った海上防衛線の概念だ。その後、1980年代に中国海軍司令官を務めた劉華清氏が、中国海軍の遠海進出段階と結びつけて活用したことで、中国海軍戦略の中核用語になった。第1列島線はフィリピン、台湾、沖縄を結ぶ線を指し、第2列島線は小笠原諸島、マリアナ諸島、グアム、パラオ周辺を結ぶ線として通用してきた。
中国の空母戦力が従来の北部海域中心の運用体制で抱えていた最大の弱点は、事実上の半閉鎖海域に閉じ込められる点だった。中国の空母戦力はこれまで、黄海と渤海湾一帯で訓練や整備を主に行ってきた。遼寧艦の母港は中国海軍北海艦隊司令部が置かれた青島で、大連には海軍の造船・整備施設が集中している。ただ、これらの海域は日本列島、朝鮮半島、中国沿岸に囲まれているうえ、戦時には日米のミサイルや爆撃機戦力の圧迫圏に入る可能性が大きい。空母は常に移動しながら位置を隠し、作戦半径を広げる必要があるものの、北部海域では限界があるとの評価が根強い。
一方、海南省三亜は、こうした弱点を補える南部海上の出口として位置づけられる。海南省を拠点とする空母打撃群は、日米の監視網を避けながら南シナ海を抜け、台湾とフィリピン北部の間にあるバシー海峡を経て西太平洋へ進出することが可能だ。三亜の楡林海軍基地は、水上艦隊と潜水艦を同時に支援する中国南部の主要な海軍施設となっている。特に2025年に就役した福建艦は、艦載機を射出する電磁式カタパルトを備えた中国初の空母で、遼寧艦や山東艦より重い艦載機を運用できるため、基地の支援能力を最大限に活用しながら作戦範囲を広げる見通しだ。
レーダーやミサイル、人工島とも連携
中国は、南シナ海の人工島に構築したレーダー、滑走路、ミサイルシステムとの連携効果も狙っているとみられる。中国の空母打撃群が西太平洋へ移動する場合、南シナ海の人工島に構築された防空・偵察・火力支援網が米軍の精密打撃をけん制し、空母の移動経路を守る「後方支援基地」として機能し得るという。中国が海南省を主要な空母拠点として育成する背景には、接近阻止・領域拒否(A2/AD)戦略があるとの分析も出ている。中国は中・長距離弾道ミサイルと駆逐艦、潜水艦、防空網を組み合わせ、米軍が第1列島線内で自由に作戦を展開できないようにするとともに、自国の空母打撃群を第2列島線まで進出させる構想を進めてきた。
台湾封鎖シナリオの中核に
ディフェンス・レビューは、海南省を基盤とした空母運用が台湾海峡での衝突時に台湾周辺海域の封鎖にも寄与し得ると分析した。海南省から出発した空母打撃群が台湾南部と南西部の海域で制空権と制海権の確保を支援し、バシー海峡を通じて台湾に接近しようとする日米の増援戦力を遮断するシナリオだ。東シナ海と台湾海峡一帯で活動する中国軍戦力と連携すれば、台湾を取り囲む立体的な包囲網の形成も視野に入る。
もちろん、中国の空母が艦載機の運用経験や遠海での補給能力で、米軍空母打撃群と正面から対抗できる実力を短期間で備えるのは難しい。それでも台湾周辺の海上交通路と増援ルートを圧迫すれば、米軍の接近コストを高め、介入を遅らせることはできるとの分析だ。中国の空母は、第1列島線内に閉じ込められた「示威用戦力」にとどまらず、域内で直接圧力をかける手段として再配置が進むとみられる。
















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