遺伝子の「塩基編集」でLDLを最大62%下げる効果が確認された

長期投与ではなく、1回の投与だけで悪玉コレステロールの数値を大きく下げられる可能性が示された。悪玉コレステロールは心臓病のリスクを高めるため、将来的な心臓病予防戦略につながる可能性がある。
米製薬大手イーライリリー傘下のバイオ企業Verve Therapeuticsのセカール・カティレサン最高経営責任者(CEO)兼心臓専門医の研究チームは、遺伝子編集によって悪玉コレステロールと呼ばれる低密度リポタンパク質コレステロール(LDL)の数値を調整できる可能性を示す初期臨床結果をまとめた。研究結果は25日、国際学術誌『New England Journal of Medicine』に発表された。
LDL値を下げるには、通常、スタチンなどの薬を長期的に服用する必要がある。研究チームは、1回の遺伝子編集でLDL値を大きく下げる方法を探った。LDL値が高いと血管が狭くなり、血流が悪化し、心血管疾患のリスクが高まる。心血管疾患は世界の主な死因の一つで、身近でありながら命に関わる疾患だ。
研究チームが用いたのは、「CRISPR-Cas9」のように遺伝子はさみでDNA鎖を切断する方法ではなく、特定の塩基を別の塩基に置き換える「塩基編集」と呼ばれる技術だ。
臨床試験には最大85人が参加する予定で、現在は35人が参加している。今回発表されたのは、この35人を対象にした初期臨床結果だ。参加者はいずれもLDL値が高いか、心臓病を抱えていた。
研究チームは参加者に、脂質の膜で覆った塩基編集治療薬を注射した。治療薬が血液に乗って肝臓へ届くと、肝細胞が脂質の膜を取り込み、塩基編集治療薬が肝細胞内のDNA上で治療標的となる「PCSK9」遺伝子を探し出す。
その後、PCSK9の塩基を1つ別の塩基に置き換え、PCSK9を不活性化する。PCSK9はLDLの除去を妨げるタンパク質であるため、この働きを抑えることでLDLが取り除かれやすくなるという。
臨床試験の結果、LDL値は最大62%低下した。治療効果は18か月時点でも維持されている。
ニューヨーク・タイムズによると、『New England Journal of Medicine』に初期段階の臨床結果が掲載されるのは異例だ。同誌は、主要な死因の一つである心血管疾患を予防するための先端治療で良好な結果が示された点に注目し、論文掲載を認めたという。
LDL値はコレステロール低下薬で調整できるが、長期にわたって薬を使い続ける必要があり、途中で服用をやめてしまう人も少なくない。1回の投与で効果が続く治療法は、服薬アドヒアランスを高める“ゲームチェンジャー”になる可能性がある。
ただし、今回の研究では安全性データを確保するための長期追跡調査が必要だ。米食品医薬品局(FDA)は、遺伝子治療研究に参加したすべての患者を15年間追跡するよう勧告している。
一方、カティレサン氏が心臓病予防の研究に取り組む背景には、家族歴があるとされる。同氏の祖母、父、叔父、弟はいずれも心臓の健康問題を抱えていた。特に弟は42歳のとき、運動直後に心臓発作で亡くなったという。















コメント0