歯の発生を抑制するたんぱく質を阻害し、新たな歯の形成を促す…先天性欠損歯の治療につながる可能性

歯を失った場合、インプラントや入れ歯で補うのが一般的だ。こうした中、日本の研究チームが自分の歯を再び生えさせる新薬を開発し、ヒトを対象とした臨床試験を進めているほか、そのためのプレシリーズCラウンドでの資金調達を行ったことも発表した。
科学専門メディア「フューチャリズム」や英国の歯科専門メディア「デンティストリー」などによると、日本のバイオ企業「トレジェムバイオファーマ」の共同創業者で研究責任者を務める高橋克博士の研究チームは、歯の発生を抑制するたんぱく質「USAG-1」を阻害する抗体治療薬「TRG035」を開発している。最近では約530万ドル(約8億5,600万円)の資金調達に成功し、臨床開発を加速させている。
もともと人の歯は、乳歯と永久歯の2回だけ生えるよう遺伝的に設計されている。幼少期には歯を作る「歯胚(しはい)」と呼ばれる組織が顎の骨の中に存在するが、永久歯が生えそろうと、この組織の大部分は消失する。
また、歯の表面のエナメル質を作る細胞も歯の完成後にはなくなるため、虫歯や摩耗で損傷した歯は皮膚のように自ら再生することができない。そのため、成人では歯が抜けても、新たな歯が自然に生えてくることはない。
一方で、一部の人には過剰歯が生じることがあり、この現象は人体に潜在的な歯の形成能力が残されている可能性を示している。日本の研究チームも、歯の発生を抑制するたんぱく質「USAG-1」を阻害すれば、眠っていた歯の発生過程を再び活性化できる可能性に着目した。
研究チームは、先天的に歯がない実験用マウスに薬剤を投与した。その結果、新しい歯が生えることを確認した。これを踏まえ、人でも同様の効果が得られるかどうかを検証している。
研究チームは2024年10月、京大病院で成人男性を対象とした第1相臨床試験を開始しており、最終結果はまだ公表されていない。会社側は今回の追加資金調達をもとに、日本と米国でさらに多くの参加者を対象とした第2相臨床試験も進める計画だと明らかにした。
研究チームによると、この治療法は、永久歯が先天的に6本以上欠損している重度の先天性欠損歯患者への適用がまず期待されている。長期的には、歯周病や外傷によって歯を失った患者にも適用範囲を広げることを目指している。高橋博士は「歯の再生治療が、入れ歯やインプラントに続く新たな選択肢になってほしい」と語った。
一方、一部の専門家は慎重な見方を示している。カナダのブリティッシュコロンビア大学歯学部のメアリー・マクドゥーガル学部長は、この治療法は成長期の子どもには効果を示す可能性があるものの、成人でも同じ結果が得られるかどうかは確認が必要だと指摘した。また、特定の歯だけを選択的に生やすことは難しく、望まない部位に歯が生える可能性についても検証する必要があるとしている。
現在、歯の欠損に対する治療としては、インプラントやブリッジ、入れ歯が標準治療として用いられている。TRG035が臨床試験で安全性と有効性を証明できれば、自然な歯の再生を目指す初の治療法となる可能性があるとの期待も高まっている。













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