酒で顔が赤くなる人、無理に飲み続けると「アルツハイマー病」リスク高まる可能性
米フロリダ大学の動物実験…顔が赤くなるALDH2変異、飲み過ぎで脳損傷リスク高まる可能性

慢性的な過度の飲酒が脳の老化を早め、アルツハイマー病に関連する病理学的変化を促進する可能性があるとの研究結果が発表された。特に、酒を飲むと顔が赤くなりやすい遺伝子変異を持つ人は、アルコールの分解過程で生じる有害物質を十分に除去できず、その影響がより大きくなる可能性があることが分かった。
現在、アルツハイマー病を完治させる治療法はない。ただ、これまでの研究では、脳の健康に良い食事、定期的な運動、禁煙、十分な睡眠、活発な社会活動、節酒などが発症リスクを下げる生活習慣として報告されている。
米フロリダ大学薬学部のナガラクシュミ・バラスブラマニアン博士は、「加齢はアルツハイマー病の最大の危険因子だが、生活習慣も脳の健康に大きな影響を与える」としたうえで、「飲酒や食生活、運動、睡眠などが加齢する脳にどのような影響を及ぼすのかを理解することで、認知機能低下を防ぐ新たな戦略の確立につながる可能性がある」と述べた。
今回の研究は、最近、米テキサス州サンアントニオで開かれた米アルコール研究学会(RSA)の年次学術大会で発表されたもので、マウスを用いて、慢性的な過度の飲酒がアルツハイマー病に関連する生物学的変化をどのように引き起こすのかを分析した。
バラスブラマニアン博士は、「過度の飲酒は、長期的な脳の健康に影響を及ぼす可能性があるにもかかわらず、見過ごされがちな危険因子だ」としたうえで、「慢性的な飲酒は脳の生物学的老化を早め、炎症や酸化ストレス、代謝異常を引き起こすとともに、アルツハイマー病の主要な病理所見である異常なタウタンパク質の蓄積を促進する可能性がある」と説明した。
さらに、「過度の飲酒は、うつや不安、社会的な引きこもり傾向を悪化させる可能性があるが、こうした変化は、記憶力の低下が現れる前のアルツハイマー病の初期段階でよくみられる症状でもある」としたうえで、「飲酒によって神経変性が進行する生物学的メカニズムや、個人によって影響の受けやすさが異なる理由を明らかにしたいと考えた」と付け加えた。
顔が赤くなるALDH2変異、有害物質の蓄積と関係
研究チームは、飲酒後に顔が赤くなりやすい反応と関係するALDH2遺伝子変異(ALDH2*2)を持つマウスを用いて研究を行った。
ALDH2(アルデヒド脱水素酵素2)は、アルコールの分解過程で生じる有害物質「アセトアルデヒド」を分解・除去する酵素だ。しかし、ALDH2*2変異を持つ人は酵素の働きが低下しているため、アセトアルデヒドを十分に分解・除去できない。この変異は東アジア人に比較的多く、飲酒後に顔が赤くなる原因として知られている。
研究の結果、アセトアルデヒドは分子レベルで脳の環境を変化させ、アルツハイマー病に関連する病理学的変化に関与することが分かった。さらに興味深いことに、過度の飲酒による脳の変化は男女で異なっていた。研究によると、男女ではタウタンパク質が蓄積する部位や影響を受ける脳細胞の種類が異なることが確認された。
バラスブラマニアン博士は、「アルコール代謝が脳に及ぼす影響は、すべての人で同じとは限らず、性別による生物学的な違いが疾患への脆弱性にも影響している可能性がある」としたうえで、「現在、こうした違いを生み出す代謝や分子レベルの仕組み、アセトアルデヒドがどのようにアルツハイマー病に関連する脳の変化を引き起こすのかについて、さらに研究を進めている」と述べた。
研究チームは、ALDH2*2変異があるからといって必ずアルツハイマー病になるわけではないものの、アセトアルデヒドを十分に分解できない状態で慢性的な過度の飲酒を続けると、脳の老化や神経変性がより早く進む可能性があると説明した。
飲酒は改善可能な危険因子…人を対象とした長期研究が必要
専門家らは、今回の研究結果は、飲酒を脳の健康管理における重要な要素として考える必要があることを改めて示したと評価している。これまでは血圧や糖尿病、運動などが認知機能に与える影響に注目が集まってきたが、飲酒も長期的な脳の健康に影響を及ぼす生活習慣の一つだという。特に、遺伝的要因とは異なり、飲酒は自ら調整・改善できる危険因子である点で意義が大きい。
ただし、今回の研究結果をそのまま人に一般化することはできないという点も強調された。今回の研究はマウスを用いた前臨床研究であり、過度の飲酒が人でアルツハイマー病を直接引き起こすことを証明したものではないためだ。
それでも今回の研究は、慢性的な過度の飲酒が脳の生物学的ストレスを高め、脳の老化を早める可能性があるという従来の知見を裏付ける結果と評価されている。専門家らは今後、人を対象とした長期研究を通じて、慢性的な過度の飲酒がアミロイドやタウタンパク質、神経炎症、神経変性、血液バイオマーカーなど、アルツハイマー病関連指標の変化と実際に関連しているかどうかを確認する必要があると指摘した。













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