MSC議長、トランプ大統領に警鐘「NATOの価値軽視は米国に大きな代償」

トルコ・アンカラで7~8日に開催される北大西洋条約機構(NATO)首脳会議を前に、米国がNATOの価値を損なうような姿勢を続ければ、同盟関係に大きな代償を伴うことになるとの見方が示された。
ミュンヘン安全保障会議(MSC)のヴォルフガング・イッシンガー議長は6日(現地時間)、米外交専門誌フォーリン・アフェアーズに寄稿した「大西洋同盟は信頼なくして存続できない」と題する論考でこのような考えを示した。
イッシンガー議長は「ドナルド・トランプ米大統領は10年以上にわたり、欧州の同盟国が米国の安全保障にただ乗りしていると批判してきた」とした上で「2015年に最初の大統領選への出馬を表明して以来、『公平な負担』を果たしていないNATO加盟国を批判し続けてきた」と指摘した。
さらに「トランプ米大統領は大統領就任後には同盟からの離脱を示唆し、2024年の大統領選でも同様の発言を繰り返した」と述べたほか、ピート・ヘグセス米国防長官が欧州に展開する米軍や主要基地の配置について包括的な見直しが進められていると明らかにしたことに触れ「トルコで開かれるNATO首脳会議ではトランプ政権によるこうした圧力が会議全体に影を落とすだろう」との見方を示した。
トランプ大統領は今回のNATO首脳会議に出席する予定だが、NATOとの溝が容易に埋まることはないとの見方も出ている。
イッシンガー議長は「米国は冷戦終結後も欧州防衛への関与を縮小する可能性をたびたび示唆してきたが、必要な局面では欧州を支援してきた」と指摘し「1992年に勃発したボスニア・ヘルツェゴビナ紛争では欧州だけでは事態を収束できず、最終的に米国の介入が和平への道を開いたことが代表例だ」と説明した。
一方で「トランプ政権は現在、欧州の安全保障認識を揺るがしている」とし「米政権はウクライナに関する米国の利害を軽視したほか、ウクライナ戦争終結に向けた交渉やイランとの戦争を巡る米国内の協議から欧州諸国を排除し、欧州駐留米軍の通常戦力削減に関する正式な協議手続きも軽視した」と批判した。
イッシンガー議長はさらに「米国への信頼が揺らぎ、ロシアの侵攻時には自力で対処せざるを得ないとの懸念から、欧州は軍事力強化に必要な資源の確保を進めている」と述べ「皮肉なのは欧州が米国にとって望ましいパートナーへと変わろうとしている時期に、米国自身の行動が同盟関係の信頼を損ねていることだ」と指摘した。
その上で「米国がNATOの価値を軽視し、自ら招いた信頼低下を回復できなければ、米国は貴重な同盟国を失う危険性がある」と警鐘を鳴らした。

イッシンガー議長は「表面的には大西洋同盟はかつてないほど強固で均衡の取れた状態にある」としつつも、NATOは重要な岐路に立たされているとの認識を示した。
また「加盟国の大半が2025年までに国内総生産(GDP)比2%という国防費目標を達成、あるいは上回っており、現在では欧州加盟国とカナダがNATO全体の国防費の約40%を負担している」と説明した。
その一方で「信頼危機が長期化すれば、欧州による新たな防衛投資が同盟にもたらす恩恵は失われかねない」と指摘し「米国はイラン攻撃前に欧州首脳と協議せず、その結果、多くの欧州諸国はその後の戦争から距離を置くようになった」と述べた。
さらに「2003年のイラク戦争では、多くの欧州諸国が米国の侵攻に反対しながらも同盟として限定的な支援を行った」とした上で「しかし現在では、欧州各国は戦争への関与そのものに消極的で、一部の国はイランとの戦争を巡り、自国の領空や基地の米軍利用を制限する措置まで講じている」と指摘した。
また、米国への信頼低下を背景に、欧州が大西洋同盟に代わる選択肢を模索し始めているとの見方も示した。
イッシンガー議長は「中南米などの一部の国々と同様に中国との経済関係を強化し、米中の間で均衡を図ろうとする国が出てくる可能性がある」とし「さらには中国との関係を選択する国が現れる可能性もある。欧州で極右政党が政権を握れば、米国よりもロシアとの政治・経済・エネルギー分野での関係強化を志向する可能性もある」との見通しを示した。
最後に「米国は欧州が米国の防衛産業への依存を減らす必要があることを認めるべきだ」と強調し「競争力のある欧州の防衛産業基盤は米国への脅威ではなく、同盟全体の産業基盤を強化し、NATOをさらに強固なものにする」と訴えた。















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