キア・スターマー英国首相が、性犯罪者ジェフリー・エプスタインを巡るスキャンダルの余波で、辞任に追い込まれる最初の首相となる可能性に直面している。もともと低迷する支持率に苦しむスターマー首相は、辞任の意向はないと繰り返し強調し、党内外からの退陣圧力の沈静化に努めている。

出典:AFP
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9日(現地時間)、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)などによると、同日、アナス・サルワー・スコットランド労働党代表は記者会見で、「政府は誤った決定をあまりにも多く下してきた。ミスが多すぎる。この混乱は終わらなければならない」と述べ、スターマー首相の辞任を求めた。

党内最高位クラスの人物から公然と退陣を迫られた背景の一つが、エプスタインスキャンダルだ。スターマー首相が駐米英国大使に指名したピーター・マンデルソン前英産業相が、これまで知られていた以上に深くエプスタインと関係していた事実が最近明らかになったためである。

スターマー首相はマンデルソン氏を起用したことについて謝罪し、同氏は上院議員職を辞任した。マンデルソン前産業相は、エプスタインと市場に影響を与えかねない情報を共有していたかどうかについて、警察の捜査を受けている。

こうした状況に不満を強める労働党議員の一部は、スターマー首相を退陣に追い込む手段として、エプスタインスキャンダルを利用していると反論している。

これを受け、スターマー首相は週末にかけて、マンデルソン氏の側近で自身の「右腕」とも呼ばれていたモーガン・マクスウィーニー首相秘書室長を解任した。さらにこの日、ティム・アレン首相官邸広報局長も辞任した。

それでも首相官邸は退陣論を明確に否定している。首相官邸報道官は、スターマー首相に辞任の意向はないと強調し、「現在の業務に集中している」と述べた。スターマー首相は同日午前、ダウニング街10番地の首相官邸で職員らに対し、「我々は引き続き国を変えていく自信を持って前進しよう」と語り、病院の待機時間短縮などの成果を挙げたと伝えられている。

また同日夜には議会で多数の労働党議員と会談し、党の結束を呼びかけるとともに、彼らの意見を聞く姿勢を示した。「我々は共にこの道を進んでいる」と語ったという。

一方、専門家の間では、歴代でも特に不人気とされるスターマー首相の退陣は「時間の問題」との見方が広がっている。2024年に就任したスターマー首相は外交面では一定の成果を上げたものの、国内政策では目立った実績を残せていない。増税しないとの公約は撤回され、福祉支出削減も党内の反発で見送られた。デジタル身分証明書導入などの国家構造改革計画も縮小された。

合法移民の流入抑制には一定の成果を上げたものの、英仏海峡を小型ボートで渡る亡命申請者の増加を食い止めることには苦戦している。最近の世論調査会社イプソスの調査では、スターマー首相を「好意的に見ている」と答えた英国人は20%にとどまり、70%が「好ましくない」と回答した。ほとんどの世論調査で、労働党は反移民ポピュリズム政党のリフォームUKや保守党に次ぐ3位に甘んじている。

5月にはスコットランドとウェールズで総選挙、イングランドでは地方選挙が予定されており、いずれも労働党の惨敗が予想されている。これを受け、党内ではスターマー首相の交代を求める声が強まっている。

マンチェスター大学の政治学者ロブ・フォード氏は、「彼がよろめきながら持ちこたえることはできるかもしれないが、今年を越えるのは難しいだろう」と予測した。フォード氏は現在の状況を、2022年初頭のボリス・ジョンソン前首相になぞらえた。ジョンソン氏は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のロックダウン期間中に首相官邸でパーティーを開いていた「パーティーゲート」問題が拡大し、最終的に辞任に追い込まれた。

ただし、労働党内にはスターマー首相に代わる明確な後継候補が存在せず、党首交代の手続きも長く複雑であることから、辞任までの道のりは容易ではないとみられている。

望月博樹
望月博樹

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