ドナルド・トランプ米大統領がイランとの最終的な終戦交渉を進める中、トランプ政権1期目の核心的な外交構想だった「アブラハム合意」を再び打ち出した。戦後の中東秩序を米国・イスラエル中心に再編し、ロシアや中国の影響力拡大を抑えると同時に、米国内の対イラン交渉への反対世論を和らげる狙いがあるとみられる。
ただ、サウジアラビアなど中東の主要国は依然として慎重な姿勢を崩しておらず、合意の実現性は不透明との見方が出ている。
アブラハム合意は、イスラエルとアラブ諸国との国交正常化や経済・安全保障協力の推進を目的とした中東外交枠組みだ。
終戦だけではない…中東秩序の再編も視野に
25日(現地時間)、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)やロイター通信などによると、米国とイランの交渉は、イランの核開発禁止や対イラン制裁緩和をめぐる立場の隔たりから停滞している。
ウォール・ストリート・ジャーナルは仲介国関係者の話として、米国はイランの核プログラム制限について事前により明確な約束を求めている一方、イラン側は制裁緩和や凍結資産の解除に関する具体的な保証を要求していると伝えた。
しかし、トランプ氏はこの日、イランとの終戦交渉と戦後の中東秩序再編を結びつけるいわゆる「ビッグディール構想」を示し、波紋を広げた。
トランプ氏は「すべての国は直ちにアブラハム合意に署名すべきだ」と主張した。その上で、「イランが米国と合意に署名すれば、世界連合の一員となることを誇りに思うだろう」と述べ、イランの合意参加の可能性にも言及した。
さらに、「米国がこの極めて複雑なパズルを解くために払ってきた努力を踏まえれば、すべての国が直ちに合意に参加することを義務化すべきだ」と強調した。
トランプ氏はこの日、サウジアラビア、カタール、パキスタン、トルコ、エジプト、ヨルダンの首脳と電話会談を行い、これらの国に対しアブラハム合意への集団的な参加を要請したことを明らかにした。
アブラハム合意は、トランプ政権1期目の2020年に締結された中東外交合意で、イスラエルとアラブ諸国との関係正常化を柱とする。アラブ首長国連邦(UAE)やバーレーンを皮切りに、モロッコやスーダンなどが参加した。トランプ氏は再選後、同合意の拡大を重要な外交課題として掲げている。
トランプ氏がアブラハム合意を再び持ち出した背景には、いくつかの思惑があるとの見方が出ている。
まず、自身がイランへの再攻撃を見送る形で終戦交渉に応じた以上、中東諸国にも外交的な負担や対応を求める意図があるとの解釈だ。特に、イランとの停戦や核交渉を単なる戦闘終結にとどめず、中東秩序の再編につなげる狙いがあるとみられる。
戦後の中東を、イスラエルと結び付いた安全保障・経済ブロックとして再構築し、いわゆる「火薬庫」とされる地域の安定化を図る戦略との見方が出ている。
中国の影響力拡大をけん制、米国内の反発抑制も狙いか
中東地域で影響力を拡大する中国をけん制する狙いがあるとの分析も出ている。米誌タイムによると、中国は米国、英国、ユーロ圏を上回り、湾岸地域最大の貿易相手国となっているほか、中国通信機器大手ファーウェイは中東諸国の中核的な技術分野や5G(第5世代移動通信システム)の構築で重要な役割を担っている。
一方、安全保障面では依然として米国がこの地域で圧倒的な影響力を維持している。米保守系シンクタンクのハドソン研究所は、アブラハム合意について単なる外交合意にとどまらず、事実上米国主導の中東経済ブロックを構築する構想と位置づけている。
内部批判を抑えるためのカードになるとの見方もある。米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は、アブラハム合意の拡大構想について、トランプ氏の対イラン交渉を批判してきた共和党内の強硬派を一定程度なだめる効果があると分析した。
共和党のリンジー・グラハム上院議員(サウスカロライナ州)は最近、イランとの和平交渉に繰り返し警鐘を鳴らしている一方で、サウジアラビアなどアラブ諸国との関係正常化の動きについては歓迎の意を示している。同議員は「歴史的な出来事となり、歴史上最も重要な合意の一つになるだろう」と述べた。
サウジとパキスタンが待った…中東再編に高い壁
しかし、現実的なハードルは高い。パキスタンは直ちに反発した。パキスタンの安全保障当局者はロイター通信に対し、「トランプ氏の発言は、イランとの停戦外交を利用してアブラハム合意の拡大を進めようとする試みだ」とした一方で、「両者は本来関連づけられるべき問題ではない」との認識を示した。
サウジアラビアも容易に動くのは難しいとの見方が多い。イスラム教の聖地メッカとメディナを抱える同国は、イスラエル承認を単なる外交問題ではなく、国家安全保障や宗教的正統性に関わる問題として捉えている。
同国はこれまで、パレスチナ国家樹立に向けた明確なロードマップが示されない限り、アブラハム合意には参加しないとの立場を維持してきた。
国際危機グループのイラン・プロジェクト責任者アリ・バエズ氏はCNBCに対し、「トランプ氏はイラン核交渉をアブラハム合意の延長線上にあるかのように位置づけようとしている」とし、「イスラエルと中東双方に利益をもたらしつつ、ワシントン内の強硬派も説得できる構図を作ろうとしている」と指摘した。














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