トランプの「核えこひいき」が始まった...イランは”攻撃”、サウジは“優遇”…中東の不満が一気に爆発か
「トランプ氏、サウジの“ウラン濃縮容認”につながる協定を承認」
米・サウジ、2年間にわたりウラン濃縮の共同研究
米原子力企業の独占的な参入を保障…中東で核競争の恐れ
【ワールドビュー・3行要約】
● 米国がイランにはウラン濃縮の停止を要求し、空爆を続ける一方、サウジアラビアとは条件付きのウラン濃縮を前提とする原子力協定を承認した。
● 米国が維持してきた「新たな濃縮国を認めない」というゴールド・スタンダード原則に例外が生まれ、対イラン核交渉や中東の核不拡散体制にも新たな変数が加わった。
● 今回の協定の波紋はサウジにとどまらず、UAEやトルコ、エジプトなど、ほかの中東諸国による核燃料サイクルの権利要求につながる可能性が指摘されている。

米国がイランにはウラン濃縮の停止を要求し、軍事行動にまで踏み切る一方、サウジアラビアとは国内でのウラン濃縮を前提とする原子力協定を承認した。米国が中東諸国に対して維持してきた核不拡散原則に例外を認めたことで、今後の中東の核秩序にも少なからぬ変化が生じるとみられている。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は21日(現地時間)、ドナルド・トランプ米大統領が、サウジによるウラン濃縮を将来的に認める可能性を含んだ「画期的な」協定を正式に承認したと報じた。
トランプ大統領が承認した米・サウジ原子力協定、いわゆる「123協定」は、米原子力法123条に基づく民生用原子力協力協定だ。今後30年間にわたり、米企業が数百億ドル規模と推定されるサウジの原発市場へ参入するための法的基盤も整えられた。
協定の核心は、ウラン濃縮に関する条項だ。
両国は今後2年間、サウジ国内でウラン濃縮を行う場合の経済性や技術的な実現可能性を共同で調査する。研究結果が肯定的であれば、米企業が核心技術を公開しない「ブラックボックス方式」で濃縮施設を建設する案が進められる可能性がある。
ただし、今回の協定がサウジによる独自の濃縮権を認めたり、米国に濃縮技術の移転を義務づけたりしたわけではない。
「ゴールド・スタンダード」から外れた123協定
米国は2009年、アラブ首長国連邦(UAE)と123協定を締結した際、ウラン濃縮と使用済み核燃料の再処理を放棄させた。これは米国の核不拡散政策の基準と評価され、「ゴールド・スタンダード」と呼ばれてきた。
しかし、サウジと締結した今回の協定には、この条項が盛り込まれていない。国際原子力機関(IAEA)の追加議定書への加盟も義務化されなかった。
サウジは現在、IAEAの包括的保障措置協定(CSA)の適用を受けているが、追加議定書にはまだ加盟していない。
米国とサウジは、別途二国間の保障措置体制を設ける方針だ。ただし、適用対象が米・サウジ間の協力施設に限定される可能性が高く、サウジの核開発計画全体を対象とするIAEA追加議定書の代わりにはなり得ないとの指摘も出ている。
イラン核交渉と食い違う濃縮基準
協定が発表された時期も、論争を一段と拡大させている。
米国はイランの核施設を空爆した後、ウラン濃縮の停止と高濃縮ウランの処分を交渉条件として提示している。一方で、地域の競争相手であるサウジには、条件付きながら濃縮に向けた手続きを認めた。
米国は、両国の問題を同列に扱うことはできないとの立場だ。
サウジは核拡散防止条約(NPT)の加盟国であり、高濃縮ウランを生産した前歴もない。しかし、サウジに濃縮の例外を認めた前例は、今後の米国による対イラン交渉の負担になる可能性がある。
米軍備管理協会は、サウジの事例がワシントンの対イラン核不拡散論理を弱める可能性があると評価した。
サウジに開かれたウラン濃縮への道
もちろん、兵器級核物質を確保するには、追加の濃縮作業だけでなく、核弾頭の設計や起爆装置、運搬手段の構築など、複数の技術段階を踏む必要がある。
しかし、濃縮施設は核燃料サイクルの中核となる基盤だ。
独自の濃縮能力を確保すれば、必要な場合に兵器級核物質の生産に至るまでの期間を短縮し、国外への依存度も下げることができる。国際的な核不拡散分野でいう「核潜在能力(latency)」が高まるとされる理由だ。
ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は2018年、「イランが核兵器を保有すれば、サウジも後に続く」と公言している。サウジの原発政策が、核不拡散を巡る論争と切り離せない背景でもある。
原発市場と中国けん制が協定の背景
今回の決定には、原発市場の確保と米中の戦略競争が同時に影響した。
米国は、交渉が決裂した場合、サウジが中国やロシアの原子炉および核燃料技術を選択する可能性を懸念してきた。
米企業が原子炉や核燃料サイクル施設を供給し、運営にも参加することで、サウジの核開発計画を管理できるとの判断も反映された。米国の原子力産業にとって海外市場を確保することも、重要な利害関係の一つだ。
原子力協力、安全保障、サウジとイスラエルの国交正常化を一つのパッケージとして推進したバイデン政権とも異なる。
トランプ政権は、国交正常化と原子力協力を切り離した。イランとの戦争や米中競争によって高まったサウジの戦略的地位が、交渉結果にも影響を与えたとの分析が出ている。
ほかの中東諸国へ波及する可能性
今回の協定を最も敏感に見守っているのは、サウジではなく、ほかの中東諸国だ。
2009年にゴールド・スタンダードを受け入れたUAEは、なぜサウジには異なる基準が適用されたのかと問題視する可能性がある。
トルコとエジプトも、原発開発やエネルギー安全保障を理由に、同等の核燃料サイクル上の権利を求める余地がある。
米国はサウジを自国の原子力供給網に取り込み、中国とロシアの影響力拡大を阻止しようとした。しかし、その過程で中東の核不拡散政策の核心原則だった「新たな濃縮国を認めない」という方針に例外が生まれた。
今後、UAEやトルコ、エジプトが同水準の核燃料サイクル上の権利を要求した場合、米国がどのような基準で線引きするのかが、中東の核不拡散体制にとって新たな試金石となる可能性が高い。















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