
アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏が所有する米紙ワシントン・ポスト(WP)が、大規模な人員削減に踏み切る。WP側は収益性の悪化を理由に挙げたが、トランプ政権第2期の発足後、ベゾス氏の姿勢が「親トランプ」路線へ傾いたことと無関係ではない、との見方も出ている。
WPは4日(現地時間)、全従業員の3分の1を解雇すると発表した。マット・マレー編集局長は社内向け文書で、ほぼ全てのニュース部門に影響が及ぶ規模のニュースルーム縮小になると説明した。米紙ニューヨーク・タイムズは、記者約800人のうち300人以上が対象になると報じている。
今回の措置で、首都ワシントンを含む地域ニュースを深掘りしてきたメトロ部門は大幅に縮小する見通しだ。スポーツ面は事実上の廃止となり、書評面も姿を消す。日々配信してきた「ポスト・リポーツ」(Post Reports)のポッドキャストも終了が予定され、国際ニュースの比重も絞り込まれるとみられる。
ベゾス氏は2013年、WPを2億5,000万ドル(約392億円)で買収した。WPは1970年代のウォーターゲート事件報道などで名声を高め、買収後は資金難を乗り越えつつデジタル転換でも成果を挙げたと評価されてきた。2018年には、2016年米大統領選を巡るロシアの介入報道でピュリツァー賞を受賞するなど、政権批判でも存在感を示していた。
ただ、トランプ大統領の再登板を挟んで状況が変わったとの指摘が目立つ。ベゾス氏はトランプ大統領に多額の政治献金を行ったとされる。WPは、選挙のたびに支持候補を社説で示すのが慣例だったが、2024年大統領選を前にカマラ・ハリス氏(民主党)を支持する社説を準備しながら、論争の末に取りやめとなった。ベゾス氏の意向が働いたとの見方が広がり、アマゾン不買運動にまで発展したという。
さらに2025年2月、ベゾス氏は論説面で自由や市場経済を擁護する意見以外は排除する方針を示し、事実上の「トランプ大統領への降伏」と受け止められた。その後、記者が相次いで退社し、社内の混乱が続いた。風刺漫画家のアン・テルネス氏も、ベゾス氏がトランプ大統領の像の前にドル袋を捧げる内容の作品が検閲されたとして辞職に踏み切った。実力派の記者がポリティコやアクシオスなどのネット媒体へ移ったとの指摘もある。
こうした流れの中で、WPの購読者数は2020年の300万人をピークに減少が続いた。2023年は7,700万ドル(約121億円)、2024年は1億ドル(約157億円)の損失を計上した。一方、競合紙のニューヨーク・タイムズが料理アプリや買い物ガイド、ゲームなどの周辺サービスを育て、購読基盤を広げて約1,300万人規模に達したとされるのとは対照的だ。WPの発行人兼最高経営責任者(CEO)のウィル・ルイス氏は、変化したメディア環境に適応できず損失が拡大し、赤字幅も広がったとの認識を示した。
WPに在籍経験のある関係者からは、ベゾス氏が新聞を壊した張本人だとの批判も上がる。買収時にベゾス氏が招いたマーティン・バロン前編集局長は、トランプ大統領の歓心を買おうとするベゾス氏の姿勢が醜い汚点を残したとした上で、短期間でブランドを自壊させた例だとして厳しく非難した。













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