
2004年にノーベル物理学賞を受賞した米国のデイビッド・グロス博士は、核戦争の脅威、軍備管理体制の崩壊、そしてAIの軍事利用によるリスクについて言及し、人類の未来に対して警鐘を鳴らした。グロス博士は「核戦争が発生する確率を年2%と仮定した場合、人類の予想生存期間は約35年にとどまる可能性がある」との見解を示している。米科学専門メディアのライブサイエンスが、19日(日本時間20日)に公開したインタビューで報じた。
同博士は、近年の欧州における紛争や中東の緊張、インドとパキスタンの対立などを挙げ、現在の国際秩序は過去数十年間と比較して極めて不安定であると指摘した。冷戦終結後の軍縮条約が機能していた時期には核戦争の可能性を年1%程度と推定する向きもあったが、現在は核保有国が9カ国に達し、かつてのような米ソ二極構造よりも危機管理が複雑化していると分析する。

「リスクは累積している」
グロス博士は「厳密な推定ではないものの、発生確率は年2%に近いと感じる」と語り、この数値は特定の時点を断言する予言ではなく、核戦争のリスクが毎年累積することで人類の生存がいかに脆弱になり得るかを示す警告であると強調した。博士は、こうした危険を抽象的な概念としてではなく、現実的な生存問題として捉えるべきだと説いている。
特に深刻なのは、核管理体制の弱体化である。グロス博士は「この10年間、主要な軍縮条約は更新されておらず、国家間の規範や合意が崩れている」と指摘した。事実、米ロ間の戦略核戦力を制限していた事実上の安全弁であった「新戦略兵器削減条約(新START)」を巡る状況に対し、国際的な懸念が高まっている。

AIの軍事判断への介入を懸念
同博士は、AIが軍事的な意思決定に介入することへの懸念も表明した。軍事現場において意思決定に求められる速度が極限まで高まることで、各国がAIに判断を委ねる誘惑に駆られる危険性を挙げ、「AIの処理速度があまりにも速いため、機械に決定を委ねる誘惑を断ち切るのは非常に困難だろう」と予測している。生死を左右する判断が機械に委ねられるリスクや、AIの生成する誤情報(ハルシネーション)による誤認のリスクについても警鐘を鳴らした。
強核力の研究でノーベル賞を受賞したグロス博士は、現在は物理学の探究以上に、人類の存続そのものを案じているという。しかし、博士は悲観論に終始しているわけではない。気候危機などの課題において科学者の警告が社会を動かしてきた先例を引き合いに出し、核や自動化戦争の脅威も人間による制御が可能であると主張する。「我々が作り出した技術である以上、我々にはそれを止める力もある」と述べ、国際社会による対話の再開と軍備管理体制の再構築が不可欠であると強調した。













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